タカヤは開いた口が塞がらなかった。
心のどこかで、男に逆らえず、関係を続けているのではという気持ちがあった。
違っていた、、、
貞淑だと思っていた妻はむしろ自分から望んで情事に溺れていた。
怒りより虚しさが込み上げる。
全て終わりだ、、、
改めてそう痛感した。
「で、、、どうするつもりだ?」
「えっ?」
「人妻に手を出した上に、避妊もせずに何度もセックスしたんだ、、、責任は取るんだろうな?」
「責任て、、、どうすれば、、、」
「俺たちは離婚する、、、お前もそうして、詩織と一緒になればいい、、、」
「それは無理です、、、」
血相を変えて男はタカヤの提案を拒んできた。
「何が無理なんだ?」
「子供がいます、、、それに、妻も子供も愛してるんです、、、」
「はあ?お前、、、詩織とは遊びだったのか?」
男は窮地に追い込まれ開き直ったのか、本音を語り始めた。
「高校時代から、、、詩織さんに気があったのは本当です、、、美人だし、、、その、、、カラダも、、、スゴイし、、、でも、遊びのつもりだったんです、、、詩織、、さんも、そうだと思ってました、、、すいません、、、本気じゃなかったんです、、、責任取れと言われても、、、俺、困るんです、、、」
「そんな、、、愛してるって言ったじゃない、、、本気だって、、、奥さんとうまくいってないって、、、」
思わず口走る詩織はタカヤを見て、慌てて押し黙った。
「そんなこと、、、その場の、口だけの戯れだろう?真に受けられたら、こっちが迷惑なんだよ、、、」
男の本性が剥き出しになる。
やはり何の値打ちも無い、見かけだけの、セックスだけが取り柄の男なのだ。
「このクズが、、、もういい、今日は帰ってくれ、、、話にならないから、明日の朝、奥さんを連れてこい、、、」
「えっ、それは、、、許して下さい、、、」
「ふざけるな、、、お前は俺の家庭を壊したんだ、、、これで済むわけがないだろう、、、もし、出来ないと言うのなら、お前の会社に連絡して全部ぶちまけてやる、、、」
「分かりました、、、それだけは許して下さい、、、」
タカヤの剣幕に男は慌てて家を出ていった。
詩織は自分の手を握りしめ、俯いたまま震えていた。
「残念だったな、、、スマホをよこせ、、、」
もうこの二人が秘かにやり取りすることなど耐えられない。
ハッとした表情を浮かべた詩織だったが、素直に従った。
「わたしが、バカでした、、、許して、、、」
タカヤは黙って家を出た。
飲まずにはいられない。
そんな気持ちだった。
つづく
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