珍客騒動も終わり、僕と彼女はやっとこの日からホテルをあとにすることが出来る。
真っ暗な駐車場。彼女の車の開いた窓越しに顔を寄せると、「おやすみなさい。」のキス。あの日から、恒例となっていた。
気分よくホテルを出たが、その日は月末ということもあり、請求書の処理のために会社へと向かった。
すぐに終わったが、それでも会社を出たのはもう9時近く。建築関係の仕事とは、こんなものです。
その帰り道、僕の携帯が鳴りました、相手は悦子さんでした。
「なんだろう?」と思いながら出てみれば、「いまから、私の家に来られる?」と言って来ます。
正直、「その時が来たのか?」と思いました。夜に自宅に誘われたのですから。
「行きます!」と言って、車を走らせる僕。彼女の家はここから25分のところにあります。
アパートに着いたのは、午後9時半前。部屋に招き入れられると、そこにはあの男性が居ました。佐伯さんです。
2人はテーブルを挟んで座っていて、テーブルの上にはビールが数本置かれています。
「いらっしゃい!いらっしゃい!」と佐伯さんはご機嫌だった。ただ、まだ酔っていそうはない。
そして、「僕が大橋さんの彼氏?ないないー、それは絶対にないー!」と言ってくれます。
悦子さんが僕を呼んだのは、その事を証明したかったのです。
佐伯さんは僕を見ては、「若っ!若っか!」と言っていました。
更に、「けど、大橋さん、大変やでー?気がめちゃくちゃ強いよー?大丈夫ー?」と心配までしてくれます。
つまり、彼女は彼に「僕が彼氏である。」と伝えているのです。
ゆっくりとビールの進む2人。対象的に、アルコールが苦手な僕は350ml缶を1本飲み干すのに手間取っています。
彼女は「無理しなくていいよ?」と言ってくれますが、僕も意地です。「なんとかこの1本くらいは。」となっていました。
飲み会は1時間程度で終わりました。佐伯さんは、赤い顔をして去っていきます。
悦子さんと言えば、あまり顔色も変わってなく、アルコールには強いみたいです。
佐伯さんが帰り際、「今夜は泊まるんやろ?」と聞いて来ました。反論をしますが、「お酒、飲んでるやん。」と言われます。
忘れてました。僕、アルコール飲んでます。
どこまでが2人の作戦だったのでしょうか。今夜は悦子さんの部屋に泊まらせてもらいます。
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