翌日の月曜日。うちの会社は月曜日には朝礼があって、すぐにホテルに行くことは出来ませんでした。
長い朝礼を終えて、車を走らせると、彼女からラインが入りました。
「昨日はありがとうございました。お昼ごはん、一緒に食べたかったのに。」と残念そうに書いてありました。
ただ、僕にはやはりあの男性が気になってしまい、「どおせ、涼しくなった部屋で2人で犯ってたんだろ?」なんてことばかり。
彼女でもなんでもない大橋さんを、勝手に悪者扱いしていました。
ホテルに着くと、作業員が工事を進めてくれていて、案外ひまな僕。対象的に大橋さんは忙しそうで、顔を合わせる間もありません。
そんな僕たちに余裕が出来たのは、作業員が帰った午後5時。
寄ってきたのは、彼女からでした。
「昨日はありがとう。でも、どうしてー?」とやはり昼食を断ったことを気にされています。
特に答えもしない僕に、「もしかして、佐伯くんのことー?」と図星のことを言って来ました。
ただ、正直に答えられるわけもなく、「猫。猫アレルギーなの!」と無理をして答えました。
彼女は嬉しそうに「後藤さん、猫アレルギーなのー?ごめんなさい!」と笑って言って来ます。
そして。「よかったー。佐伯くんのこと気にしたのかと思って。あの子、恋人でも彼氏でもないからねー?」と言われました。
それを聞いて、少しだけ安心をしますが、彼女はなんでわざわざそんなことを言って来たのだろうか?
午後6時、僕と彼女以外の作業員が全員帰りました。この後、カギを閉めて帰るのが、2人の当たり前となっていました。
そんな時、「ちょっと、一緒に来てもらえる?」と彼女に誘われ、エレベーターに乗ります。
向かったのは、何にもないただの客室。また、何か手伝いをさせられるのかと思っていました。
彼女はマットしかないベッドに座ると、おもむろにリモコンでテレビをつけました。
まだ何の設定もされてなく、一般放送しか映りません。
それを観ながら、「恋人気分…。」と一人で呟きました。
何を言っているのか分からない僕はソファーに座って、様子を見ています。
すると、彼女はベッドに横転がると、「後藤さんとちょっとだけ恋人気分に浸りたかっただけー。」と言っていました。
「ねぇー?私、佐伯くんとエッチなことなんてしたことないよ?」とも言って来ます。
そして、「タイプだったら、絶対、後藤さんの方。あっちは全然タイプじゃないのー!」と言ってくれました。
午後7時。遅い夏の日暮れ。やっとこのホテルにもいつもの薄暗さが戻りました。
廊下に出た僕達は手を繋ぎ合い、エレベーターに乗って、帰りの駐車場へと向かいます。
しかし、2人が駐車場に出ることはありませんでした。
誰も居ない真っ暗な1階のロビーで、激しく互いの唇を奪い合ってしまったのです。
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