「こんな暗いところで、、なにしてるのー?」、この真っ暗な建物に悦子さんの声が響きました。
驚いていた僕でしたが、座ったまま、「別にー。」と答えます。
夕方までここにいたはずの彼女は、それでも建物内を見渡し、何かの時間を作ってくれています。
「私に何か言いたいことあるー?」、それはいつもの甘え声ではありません。真面目な彼女です。
しばらく考えた僕は、「あーあ、全部本当だし…。手、繋いじゃったし…。」と答えました。
悦子さんは、「彼女、若いし、可愛らしいもんねー。胸も大きいしー。」と皮肉たっぶりに言ってくれます。でも、もうダメです。
建物を眺めていた悦子さん。しばらくすると、僕の隣に腰掛けて来ました。
そして、「もう一回だけ聞くよー?わ・た・し・にー!!何か言いたいことある?」に聞いてくれます。
それはいつもの彼女の声でした。それが何故か嬉しくて、目が熱くなっていくのがわかりました。
「すいません。本当にすいません。すいません。」と、ただ謝ることしか出来ません。
それを聞いた彼女は「よかったー、何にも変わらないあなたで…。素直にちゃんと謝れるのが、あなたでしょ?」と言ってくれます。
「あのバカ女に引っ掛かって、私の知らないあなたになってたら、別れるつもりだったわー。」と本心を言ってくれるのでした。
「私ねぇー?もうすぐ52(才)のおばさんよー。ブスだし、胸ちいさいし…。あなた、どうするー、こんなのー?」と聞く彼女。
考えた僕は、「僕??結婚するつもりだけど?」と初めて、「結婚」という言葉を使っていました。
流石の彼女もそのキーワードまでは想像していなかったらしく、一瞬言葉を失っています。
そして、「私がー?お嫁さん?フフフ…、出来たらいいねぇー、フフフ…。」と呆れたように笑っていました・。
ここは、まだ工事現場…。
2週間ぶりの悦子さんとのキスは、ちょっぴりホコリの味がしました。
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