あの日から、僕と悦子さんとの間に会話はなくなりました。もちろん、2人ともプロです。仕事の話だけはします。
しかし、それ以外のものはなく、もう恋人同士だった頃の面影はありません。
悦子さんの場合、それは施主様である怜菜さん達にも向けられていたと思います。
あの和やかだった雰囲気は無くなり、ただ仕事だけをこなしている、そんな感じです。
電気屋さんの工事が本格的に始まりました。しかし、昼間に動けない僕は、やはり仕事帰りに覗くだけとなります。
車を停め、中の確認をして帰るだけ。そんなことを毎日のように繰り返していました。
そんなある日…。
床に座り込み、天井を眺めています。悦子さんを失ったことで、仕事にもあまり気合いの入らないつまらない毎日。
どうでも良くなっていたかも知れません。
しばらくすると、車が止まりました。こんな時間に現れるのは、きっと怜菜さんです。
明らかに僕に好意を見せてくれる彼女に、「彼女でもいい…。結婚されててもいい…。」と良からぬ心が芽生えてもしまいます。
あの大きな胸に、顔を埋めていく僕の姿まで見えて来るのです。
聞こえてくる足音…。
それは徐々に近づいて来ました。あの幼くて可愛い顔、揺れる大きな胸が想像をされます。
そして…、
「こんな暗いところで、なにしてるのー?」
悦子さんだった…。
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