工事も順調に半分が終わり、折り返しを迎えていました。
大橋さんもほぼ毎日顔を出してはいましたが、僕も作業員に仕事をさせてましたので、彼女と話す機会はほとんどありません。
そんなある日の午後、作業員が別の仕事で好んでホテルをあとにします。
僕もあまり用がなく、会社に帰る気もないので、ホテル内をウロウロとしていました。
そんな時、ある客室から出て来た彼女と遭遇をしてしまいます。
彼女もどこか僕と話をしたがっていたのかも知れません。
何にもないただの廊下で、久しぶりの立ち話が始まります。
「後藤さん、忙しい?」と聞かれ、「大橋さんほどでは。」と謙遜して返します。
すると、「ちょっと、時間ある?手伝って欲しいんだけど。」と言われました。
彼女と向かったのは、いま彼女が出て来たばかりの客室。休店をしてるとは言え、ラブホテルの普通の客室です。
変な気持ちになりながらも、2人で部屋へと入ります。当然、扉は勝手に締まりました。
彼女が調べていたのは、この先に不要となる大きなボックス。
ラブホテル用の機械が納められた、やたらとデカい木製の箱です。
寸法は調べられたようですが、その重さまでは小さな彼女では持ち上がらなかったみたいでした。
「一緒に持つから。」と言って、2人で担ぐように押すと、僕にとっては案外軽いもの。その箱は勢いよく、移動をします。
しかし、力一杯の力で持ち上げようとした彼女はバランスを崩して、「キャー!」と前のめりに倒れてしまいました。
「痛ぁー!」と言ってその場に座り込むと、「後藤さん、力あるよねー。」と言って来ます。
「いやいや。」と答えた僕でしたが、彼女を見る僕の目は変わっていたかも知れません。
季節は初夏。エアコンも付けてない暑い客室。そんな部屋で一人で作業をしていた彼女のシャツは汗で濡れてしまっていました。
シャツの首元は重くなって垂れ下がり、普段は見えないはずの胸元も広がっています。
そして、透けてもよいであろう肌色のブラジャーが見えます。
ただそこに膨らみはなく、貧相なものを包み込んでいるように僕は感じました。
そんな彼女から、「コーヒー飲む?」と誘われました。時刻は3時近く、コーヒータイムのようです。
彼女に連れられ向かったのは、駐車場。「缶コーヒーでも買いに行くのかな?」と思いました。
しかし、車の中から小さめの水筒を取り出すと、プラスチック製のコップに灌いでくれます。
「毎日、缶コーヒー買うと高いでしょ?だから、家で作って持って来てるの。」としっかりした女性。
そのコーヒーを飲みながら、「後藤さんって、エアコン付けられる?」と聞いてきます。
僕は「いやいや。エアコンの工事は他の業者がやってますよ?」と聞くと、「私の家。」と言われました。
彼女の家のエアコンが壊れたらしく、それを僕に言ってきたのです。
しかし、エアコンは家電屋が取り付ける方が安くて、とてもお勧めは出来ません。
そこで、「なら、大橋さん、家電屋でエアコン買ってきて。取り付けは僕がしますから。」と話をまとめます。
「お金は?」と聞くので、「昼飯。」とだけ答えました。
工事日は週末の日曜日。もちろん、会社には内緒のアルバイト(?)です。
僕は初めて、彼女の家に行くことになります。
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