2ヶ月間に及んだラブホテルの改修工事が終わった。
そして、今日はオープン日、工事関係の数人は「何かあった時のために。」とオープン待機をすることになっていた。
メンバーは、建築は悦子さん、電気は僕、あとは水道関係の担当者とコンピューターのシステムのイケメン兄ちゃんの計4名。
事務所で数時間の缶詰め状態となる。飲み物やお菓子くらいはあるが、正直かったるい仕事です。
その中から先に逃げたのは水道の責任者でした。「車の中でいますので。」と事務所から逃げました。
逆にシステムのお兄さんは忙しくて、ホテルが新システムを導入したので、フロントの女性に付きっきり。
僕と悦子さんの2人は、バカ正直に事務所のソファーで待機をしてました。
オープンをして2時間後、そこに突然オーナーさんが現れました。70才くらいの男性です。
少し強面の方なので、僕達も緊張をして背筋まで張って座り直しています。
オーナーさんは一通りの仕事を終えると、「ありがとうのぉー。」と僕達に声を掛けてくれます。
しかし、女性好きなのでしょうか、悦子さんを相手に、長く話をされていました。。僕は隣で笑顔を振る巻いているだけです。
そんなお二人がこんな会話をします。
「お姉さん、独身なんかー?どしてやー?男、嫌いか?」とオーナーさん。
「そんなことはないですけど…。ご縁が…。」と返事を濁す悦子さん。
調子の出てきたオーナーさんは、「男、探したろかー?いくらでも探して来てやるぞー?」と言います。
すると、「本当は、いまお付き合いをさせていただいている方がいます。ご心配、ありがとうございます。」と彼女が答えました。
しかし、「そうかー?お前んところの社長、お前が彼氏も作らんって、嘆いたとったぞー?」と引きません。
そして、「どんなヤツや?ええ男なんか?」と更に問いただします。
「はい。優しい人です。楽しい方です。」と答えてくれていました。
悦子さんに彼氏がいると聞いて、面白くなくなったのか、標的は僕になります。彼女と同じ質問でした。
「彼女?いますよ。恐い…、暴力的…、アル中…、わがまま…。」と答えます。
聞いたオーナーさんは、「なんやそれ、お前ー?最低な女に捕まったのぉー?」と同情をしてくれていました。
ところがこのオーナーさん、なかなかの鋭い観察力をお持ちのようで。それは、後で分かります。流石は上に立たれている方です。
お昼になり、食事のために僕達は一度、このホテルを離れます。悦子さんと一緒に、軽いものをお腹に押し込んでくるのです。
お昼はうどんでした。麺をすする彼女は、「なんてー?!恐いし、わがままやし、アル中ー?あと、なんだっけ?なんでもいいわ!よくも…。」とご立腹な感じ。
「冗談ですよー…。あと、暴力的です。」と答えると、流石にこれには笑ってくれていました。
時刻は夕方4時。まだ3時間もここに居なくてはいけません。時間はなかなか経たないです。
そんな時、「あと頼むぞ!」と言って、オーナーさんが引き上げることになります。
僕も彼女もソファーから立ち上がり、丁寧に見送りをするつもりでした。
しかし、オーナーさんが、「大橋さんよー?」と彼女に声を掛けました。彼女も「はい!」と正しく返事をします。
僕も彼女も、何を言ってくるのかと待ち構えます。そんなオーナーさんが言ったのは、「お前、恐くてアル中なんか?」でした。
言われた彼女は、「はぁー?」という顔を見せています。
そして、去り際に、「部屋1つ、タダで貸してやるわ!使うなら、使え!」と言って帰って行かれました。
全て、お見通しだったようです…。
※元投稿はこちら >>