静か過ぎる部屋。
張り巡らせた僕のアンテナは、稀にアパート内から聞こえてくる物音、遠くで走る車の音、その全てを聞き逃しはしない。
もちろん、それは隣で眠っている悦子さんの方にも向けられていた。
呼吸をする度に、僕の肩へと吹き掛けられるアルコールの匂い。
そして、その呼吸はいつまでも一定になることはなく、喉に溜まってしまう唾液が数分ごとに飲み込まれていた。
(起きている…。彼女は眠ってはいない。)、僕のアンテナはそう判断を下していました。
僕は電気を消すために、床に転がっていたリモコンに手を延ばします。
その瞬間、彼女の身体は硬くなり、僕に乗せていた手にも力が入るのです。
電気が消されました。静かだった部屋は、更に静けさを増します。
すると、寝たふりをしていた彼女が「うーん…。」と言って、僕の身体に寄り添うのです。
僕の手は、短髪である彼女の後頭部に掛けられました。軽く唇を重ねると、自然と彼女の唇もそれに応えてくれます。
「ふふっ…。」と笑う声が聞こえ、「さっき、私、猫ちゃんにもキスして来たのよー?大丈夫ー?」と心配をしてくれるのです。
彼女の上に乗った僕のキスは、更に激しくなっていきます。
しかし、「後藤さん、ダメ…。ダメ…。」とそれ以上を拒まれました。
物音も気にしてしまうような古いアパートです。深夜のセックスには、やはり制限が掛けられます。
その後、軽いキスを交わしながら、彼女としばらく語り合いました。
その内容は数週間前のこと。あのエアコン工事を頼まれた直後の話でした。
その日もホテルの工事は行われていました。しかし、僕の方にはその予定がなく、ある場所へ車を走らせていました。
そこはかなりの田舎の住宅地。路地は笑うほど狭くて、乗用車に乗る僕も、「これ、出られるのか?」と心配になるほどでした。
なんとか切り返しながらも着いたのは、お世辞にも大きいとは言えない建築会社。あの工務店さんでした。
社長さんからある見積り依頼を受けた僕は、「郵便受けに入れておいて。」と言われて、ここまで来たのです。
見積書を投函した僕は、すぐにこの場を去るつもりでした。しかし、もう一台、車が入って来てしまいます。
見慣れた紺の乗用車。大橋さんが戻って来きました。
「あれー?後藤さん、どうしたのー?」といつもの甘え声でそう言われ、理由を告げます。
すると、「ああ、あれ、やっぱり後藤さんにお願いしたのー?」と言って、小さな事務所に入って行きます。
そこはとても小さな事務所。入口すぐに彼女の机があって、奥の小さな部屋は社長さんの部屋のようです。
打合せをするスペースもなく、玄関には丸椅子が二脚置かれています。
僕はその椅子に座らされ、彼女は冷蔵庫からコーヒーを取り出すと僕に差し出しました。
そして、二人でこんな話をしたんです。
「後藤さんのこと、すごく気に入ってるのよ、あの人。しっかりしてるし、面白いって。」、社長さんのことです。
「そうですか?僕なんて、最低の電気屋ですよ?電気のこと、全く知らないし。」と答えました。
それは事実で、電気科も出てない僕はその手の計算などまるで出来ません。みんなに頼って、頼って、ここまでやって来たのです。
彼女はそれを「人柄」と言いました。「親しみ易いから、信用されてるから、みんなが助けてくれるんだ。」と。
そして、それは「自分にはないこと。私にはマネの出来ない才能。」と話してくれました。
そんな彼女が自分のことを語ります。
「私はそれが出来ないの。なんでも自分でやってしまうの。だから、結婚も出来なかったいし。」と言います。
しばらく話を聞いていた僕は、「どうしてー?もったいないでしょ?大橋さん、美人だし。」と言ってあげます。
聞いた彼女は、「私がー?やめてよー。恥ずかしいよー。そんなはずないやろー。」と照れていました。
その彼女を見て、僕が好意を持ったことは間違いありません。
「私のこと、美人って言ってくれたの、後藤さんくらいよー?」と、あの時のことをしっかりと覚えてくれていた彼女。
「本気で言ってたのー?」と聞かれ、彼女はこれまでにどんな男性と出会って来たのかと心配になりました。
絶世とは言いませんが、美人の部類には入る容姿です。少なくとも、僕には…。
そして、「僕と付き合ってもらえますか?これからも。」と言うと、「私でいいなら…。」と返事をもらうことが出来たのです。
最後のキスを終えると彼女は眠りにつき、僕のアンテナも畳まれました。
この部屋からは物音が消え、アパート全体が暗闇と静寂に包まれます。
寄り添うように眠った二人でしたが、悦子さんの手だけは無意識にある場所を触っていました。
それは彼女の胯間。51才の彼女のアソコは濡れていたようです。
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