ヤヨイにはない男を知り尽くした肉体を手放すことが出来ず、密会を重ねるようになっていた。
そんなおり、美子の身に異変が起こった。
美子は病魔におかされていた。
悪性の腫瘍。
ヤヨイは泣きながら、もう先は長く無いとカイトに告げた。
カイトは愕然とした。
美子のことを心の奥でまだ愛していた。
カラダを重ねることはほとんどなくなっていたが、自分にとって大切な女性であり続けていた。
きっと辛かったのだと思う。
それなのに気付かれ無いように無理をして自分に尽くしてくれた。
カイトは泣いた。
ヤヨイを抱きしめ、大丈夫、二人で美子を支えてあげようと慰めることしか出来ない自分が辛かった。
こんなときなのに、仕事にのめり込む父にヤヨイは憤りを覚えているようだった。
そんな状況が更にヤヨイを追い詰め、カイトに依存するようになっていた。
涙を見せず、自分のことよりもヤヨイを思い遣る母を見るのが辛いと、やつれを隠せなかった。
そんな中、カイトは美子から呼び出しを受けた。
一人で会いに来て欲しいという希望だった。
カイトは誰も居ない病室で美子の手を握っていた。
無理をしたのだろう、美子は化粧をしていた。
死期が迫っていても恋する男には、少しでも
キレイに見られたい女心だった。
カイトは涙をこらえた。
美子はヤヨイを支えてあげてと言った。
そして出来れば幸せにしてあげて欲しいと、母としてカイトに望みを託していた。
カイトは頷いた。
美子は安心したのか、ホッとした表情を浮かべた。
そしてうっとりとした顔でカイトを見つめ、その手を自分の頬に導いた。
「カイトのこと、、、本当は誰にも渡したくない、、、カイトに逢えて、、、良かった、、、愛しているわ、、カイト、、、」
美子の瞳から涙が溢れていた。
カイトはそっと美子に唇を重ねていった。
十日後、美子はこの世を去った。
二人は結婚し、翌年には娘の美音を授かった。
カイトは美子の生まれ変わりと娘を溺愛し、ヤヨイを愛して幸せな家庭を築いていった。
美音は小学生になった。
日に日に可愛さを増し、祖母の美子の美しさの面影を思わせる娘にカイトは惜しみない愛情を注いだ。
カイトは39になり、祖母の後を継ぎ社長になっていた。
祖母はまだ引退はせず、カイトにアドレスをしてくれる大女将の立場に残ってはいたが、ゆくゆくはヤヨイに後を任せるつもりでいるらしく、ひ孫の美音を猫可愛がりしていた。
ヤヨイは28になり若女将になった。
妻のヤヨイは28になり、益々美しくなっていた。
人妻の色気を漂わせ、まさに女の盛りを迎えようとしていた。
カイトが出張から帰った日、妻と娘は待ちかねたように迎え入れてくれた。
嬉しそうに纏わり付いてくる美音と存分に戯
れ、娘が疲れて眠りにつくとヤヨイはカイトを求めてきた。
寂しかったと何度も告げながらカイトの腕の中で、最近とみに艶っぽさを増したカラダを震わせた。
ヤヨイはナマの挿入を求めた。
「あぁ、アナタ、、、わたし、もう一人子供が欲しい、、、だから、これからは生でシタいの、、、いいでしょう?」
カイトは表向きは受け入れた。
ヤヨイは激しく乱れた。
飢えた人妻のように久しぶりの夫とのセック
スを貪った。
アナタ愛してると声をあげながら、あまりにも貪欲に快楽を求める妻に、
カイトは何度もねをあげそうになった。
「アアッ、ダメよ、まだイッちゃイヤッ!もっとシタい!もっと、、もっといっぱい、イキたいのぉ!」
必死にカイトは耐えたが限界が近い。
「ダメだ、ヤヨイ、俺、いく!」
「ダメーー、もっとオマ○コするのお!」
「ううっ、出る!」
「アアッ、やっ、、、あっ、イク!」
ギリギリ間に合ったのか、ヤヨイも達したようだ。
「アアッ、アナタ、、、愛してる、、、」
しがみついてくるヤヨイの髪を優しく撫でる。
「ねえ、アナタ、、、わたし、もっと欲しい、、、」
「ごめん、、、これから出張の処理をしなければならないんだ、、、明日、提出しないと、、、続きは明日の夜にしよう、、、」
ヤヨイは素直に頷いた。
先に休むように言って自室へ向かった。
パソコンを立ち上げ、寝室の今の映像を確認する。
セックスしたばかりの妻がオナニーに耽っていた。
そして、その口から漏れるのは夫の名前ではなかった。
「アアッ、もっとシタい、、、先生のチ○ポ欲しい!先生とすごいオマ○コ、シタい!」
隠しカメラはその音声もしっかり拾っていた。
そしてこのカメラは自分が出張中のヤヨイの情事をしっかりと録画しているはずだ。
このことはもちろんヤヨイは知らない。
これは妻を追求するためのものではない。
ヤヨイが自分の知らないところで、他の男に抱かれる時、どんな女の表情を見せ、どれだけ相手を求めているのかを確かめたいだけだ。
カイトは妻を心から愛している。
ヤヨイもそうだろうと確信してはいる。
しかし人は一生、一人の相手だけを愛し続けることは出来ない。
愛する伴侶が有りながら、一時だけ他の恋に身を焦がすこともあるのだ。
それはただのセックスだけの関係だけの場合もあるかも知れない。
でもそれが人生において、ほんの短い期間だが、そばにいる大切な相手への愛情を上回ってしまうことがある。
カイトはそれを知った。
以前はそれをどうしても許せず相手を責め立てた。
でも人は所詮他の人間の心まではコントロールすることは出来ない。
しかし、本当の愛があるなら相手は必ず戻ってくるはずだ。
カイトは死んだ美子と約束した。
ヤヨイを幸せにすると。
けれどそれはヤヨイの心が自分になければ出来ないことだ。
それに人にはどうしても越えてはいけない一線がある。
だからこそカイトはこれから、それを確かめなければならない。
つづく
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