ヤヨイは変わった。
時折見せる子供じみた仕草は影を潜め、大人びた雰囲気を漂わせるようになった。
物腰が穏やかで優しい、母の美子を思わせる女性へと変貌を遂げた。
カイトに対しても以前のように、人目も気にせず纏わり付いてくることがなくなった。
それでいて陰ではカイトの世話を焼きたがる。
休日には掃除から洗濯、食事まで。
その上、毎日のお弁当まで。
ヤヨイは甲斐甲斐しく尽くしてくれる。
ヤヨイは意外にも家庭的な女だった。
そして、セックスでは激しく燃えるオンナだった。
すぐにオンナの歓びを覚え、カイトに仕込まれ、淫らな言葉を口にして快楽を貪欲に貪るオンナになった。
カラダも一段と女らしくなり、端正な顔立ちにも色気を滲ませる。
ヤヨイはカイトにとって、まさしく理想のオンナになっていった。
そして三月が過ぎた頃、カイトが一人ホテル内を歩いていると女性客から声をかけられた。
客はナナだった。
予期しない再会にカイトは動揺を隠せない。
「久しぶりね、、、カイト、、、」
ナナは以前と変わっていなかった。
いや、一段と美しさを増しているように見えた。
「ど、どうして?」
浴衣姿がたまらない色気を放出していた。
「あら、見れば分かるでしょう?わたしはお客、、、一人で温泉にきたの、、、」
言葉とは裏腹にネットリとした視線でカイトを見つめてくる。
「そうですか、、、それは、、ありがとう御座います、、、」
「ふふっ、ずいぶん他人行儀なのね、、、まあ、いいわ、、、」
ナナは辺りを見渡し、素早くカイトに身を寄せた。
ワザとなのか、ナナの豊満な乳房がカイトの腕に押し付けられ、その上深い谷間を覗かせている。
カイトは思わず息を呑んだ。
ナナは素早く耳元で囁いた。
「姉さんのことで話があるの、、、あとでわたしの部屋へ来て、、、」
そう告げてナナは足早に行ってしまった。
リリナのこと?何かあったのか?
もう関わる気はないが、一度は妻だった女だ。
やはり気にはなる。
それにナナは俺の居所をどうして知ったんだ、、、
カイトは仕事が手につかなかった。
気はすすまなかったがカイトは仕事を終え部屋を訪れた。
ヤヨイは美子と連れだって用事があり明日まで帰って来ない。
「元気そうね?」
「まあ、、、ナナも元気そうだな?」
「うん、、、今日はね、、、カイトに逢えたから、、、」
こうして逢うのは1年半ぶりか、、、
ナナのその言葉だけでいろいろなことがあったのが分かる。
「で、、、リリナのことって、、、」
カイトは話を促した。
ナナの話によれば、リリナはあれからそれぞれの浮気相手の家族から責められ大変だったらしい。
家にまでやってきて、泥棒ネコ、淫乱女など罵声を浴びせられ、両親を巻き込み大ごとになったようだ。
やっと一段落がついたとおもったら、今度はリリナがネットで男漁りを始め、乱れた生活を送るようになった。
両親が叱責すると、ヘソを曲げ家を出てしまった。
今は男と暮らしているらしい。
「姉さんも懲りないよね、、、また同じことを繰り返すわ、、、」
「ふーん、、、そうか、、、」
カイトは正直、呆れることしか出来なかった。
かって長い間良くしてくれた義理の両親だった二人には同情するが、もう自分には何も出来ないし、する気もない。
それにナナだって、、、
「そう言うナナはどうなんだ?」
思わず言葉に皮肉がこもる。
「わたしは別れたよ、、、あんな男、、、アイツのせいで、、、まあ、たっぷり仕返しはしてやったけど、、、もう、、男はこりごり、、、カイトは、、、誰か、、いい人がいるの?」
「俺か、、、好きな人はいる、、、結婚しようと思ってる、、、」
ナナは寂しそうな表情を浮かべた。
「そう、、なんだ、、、、ねえ、カイト、、、わたし、最後にカイトにどうしてもあげたいものがあるんだ、、、ちょっと待っててくれる?」
そう言うとナナはカイトを粘り着くような視線で見つめ、隣の寝室へと入っていった。
つづく
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