⑨…
熊野の手首をとっさに掴む健子の手…
自分の恥ずかしい臭いを嗅がれるは、絶対に避けたい…
そんな気持ちから、素早く持っていたウェットティッシュで、熊野の指を力いっぱいに拭くのだった。
熊野「なにすんだよ…奥さんの尻の穴の香りを楽しもうとしたのに…」
そう言う熊野の顔を…手首を掴みながら健子が驚きと軽蔑が混じり合った表情で…首を横に振りながら見ている。
熊野「チッ…ガキの姿を見ながら…その母親の肛門臭を楽しむ…最高に興奮すると思ったのによぉ…」
この男は…本当に危険だ…なんとかごまかして…この場を離れないと…何をされるか…でも怒らせると洋輔が…どうしようかしら…
色々と考えた健子は…
健子「すっ…すいません…私…ちょっとトイレに行ってきますから…」
それで、とりあえず逃げるしかなかったのだ。
……
………
買い出しから戻ってきた久雄の目に、柔道場から出てきて、校舎に向かう健子の姿が映る…
久雄「あれ?(洋輔君のお母さん…どこに行くんだろう…まさか…先生に何かされて…)」
健子の後を追うように…久雄も校舎の中に入って行く…
女子トイレの扉が、閉まっていくのが見えて、少し安心する久雄だったのだが…
久雄「……(なんだトイレか…心配してしまった…柔道場には男子用しかなかったから…誰もいない校舎まできたんだ……誰も……いない)」
これまで真面目に生きてきた中年男性に…邪な考えが浮かんだわけではなく…本能がそうさせるのか無意識に…という感じで女子トイレのドアを…音がしないように…そっと開けてしまうのだった。
中に入ると、5つある個室の1つの扉が閉まっている…そこにいるのは確かで…少しずつ近づく久雄…
学校のトイレの独特な匂い…芳香剤と色々なものが混じったあの感じ…それとは違う異臭が久雄の鼻に吸い込まれる…
久雄「……(あぁ…ウッ…ウンコ臭い…そんなつもりじゃなかったのにな…おしっこの音とか少しでも聞ければ満足だったのに…洋輔君のお母さん…ウンコしたんだ…)」
久雄は、扉の向こうにいる健子に気づかれないように…排泄物から出ているであろう…その悪臭を…スゥハ…スゥハ…と何度も嗅ぎまくり恍惚としている…
そして、和式の水洗トイレにお尻を出してしゃがみこむ健子は、大きめ溜め息をついていた。
健子「はぁ~…(この後…なんとかしないとだよね…それにしても…私ったら…本当にウンチしたくなっちゃうんだもん…快便なのは嬉しいんだけど…ちょっと臭いかな…タハハッ)」
健子はあることに気づく…
健子「…(そうだぁ…私…消臭スプレー持ってきてなかったわね…まぁ…いっか…誰もいないし…来ないでしょ…)」
職場のトイレや家のトイレでもそうなのだが、健子は、他の人や家族が、自分の排泄物の悪臭で不快にならないように相当な気遣いをして生きてきたのだ。
それは…20年以上…健子と一緒に生活して、同じトイレを使用する旦那の洋一郎でさえ…その匂いを僅かでも感じることがないぐらい徹底されている。
家族にすら嗅がれないように…そうしてきたのに…他人である中年男性が…不快に思うどころか喜色満面といった感じで…それを嗅ぎまくっているのを知らずにいた。
久雄「スゥハ…スゥハ…(美人で可愛らしい洋輔君のお母さんでも…臭いウンコするんだなっ…なんか酸味…少し辛味も…いや甘い感じ…彼女の匂いだと思うと…こんなに勃起したの初めてかも…ハァ…ハァ…)
久雄は…夢中になり過ぎたのだ…思わず足音が…
健子「ぇ…?(だっ…誰かいる!やだぁ!)」
健子は、慌てながら便器の中にある…太くて長い焦げ茶色の排泄物を流す…それが手遅れであるとしても…
健子「熊野先生!そこにいるんでしょ!ここ…女子トイレですよ!変態!出ていって…早く出てけ!!」
自分の怒声で…誰かが急ぐように…トイレから出ていく…
健子「嘘…いつからいたの?(やだぁ…もしかして…におい…ずっと嗅がれてた?しっ…信じられない…あの変態…ゆっ…許せない)」
怒りと恥ずかしさで顔を真っ赤になり、唇を噛み締めている健子は、大きな勘違いをしていることに気づいていないのだった。
柔道場に戻ってきた健子が熊野に話しかけている…久雄は少し離れた場所からその様子を窺う…顔色を悪くして汗だくになりながら…
久雄「……(やっ…やばいぞ…洋輔君のお母さん…トイレにいたの熊野先生だと思ってる…どっ…どうしよう)」
あたふたする久雄であったが、熊野と話し終えた健子が、柔道場から出ていくと…
もう…戻ってくることはなかったのだ…
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