それからの萌は乾いた砂地が水を吸い込むように、俺とのセックスにのめりこんでいった。俺も若い萌の身体のとりこになり、周りに知られる事を恐れながらも月に二回くらいのペースで逢瀬を重ねた。そして萌の身体を3年間で俺仕様に育てあげた。
もともと萌は高校時代、アスリートとして鍛えあげられ、ストレッチに明け暮れた柔軟性に富んだ身体は、貪欲にいろいろな体位を受け入れ、俺の愛撫に声を上げて応えるまでに、そんなに時間はかからなかった。
特に首筋への唇による愛撫には身をよじって反応を示し、形の良い乳房の弾力は俺の指をはじき返し、最初は恥ずかしがっていた秘唇への口づけも積極的に受け入れるようになった。
セックスへの興味も旺盛で、俺へのお返しの愛撫もすぐに大人のテクニックに変っていった。俺のペニスを口に含んで、いたずらっぽく俺の顔を見上げる様子は小悪魔そのものだった。好きな体位もはっきりと口に出してせがむようになった。一番のお気に入りは正常位で最初の時のことが忘れられないらしい。いつのセックスでも、はじまりは正常位での挿入をせがんだ。次にお気に入りは対面座位だった。騎乗位からの変化で胡坐の上で俺に抱きつき、キスをせがみながら激しく腰を動かした。深い結合ではないものの、俺との密着感が好きなのだといった。
「こんなの恥ずかしいからいやだ・・」
最初、後背位を試した時にはそう言っていた萌だが、他の体位との挿入角度の違いや、「奥で子宮に当たる感じがすごい」とだんだんと馴染み、ついには毎回「後ろからお願い・・」とリクエストされるようになった。
萌曰く「自分では直接見ることのできないお尻の部分を、課長に見られていると思うと、不思議な気分になってゾクゾクとした妙な興奮を覚える」のだそうだ。
或る時、いたずら心からピストンの最中に、唾を付けた親指で後ろのすぼみをひと撫でしたら、びっくりしたのか『ひゃん!』と子犬のような高い声を上げた萌が、振り向いて俺を睨んだりもした。しかしその反応が面白くて、その後も何度も試したが『もぉー』と尻を軽く左右に振るだけで、けっして拒否の反応ではなかった。
一度、指の先をほんの少し差し入れた時には、さすがに怒られたりはしたが。
3年間続いた萌との関係に突然ピリオドが打たれたのは、彼女が22歳の誕生日をまじかに控えたある日のことだった。いつものように俺に抱かれた後のベッドの上で、しっかりと俺の目を見すえて唐突に、しかも意外とサバサバした表情で切り出した。
「私ね、結婚することに決めたんだ‥」
萌は高校時代から告白されていた、陸上部のコーチのプロポーズを受け入れた経緯や彼の人となりを話した。そして明日退職願を提出すると告げた。
先のない二人の不毛な関係に見切りをつけたかったのだろうか、寝耳に水の告白だったが、俺は黙って受け入れるしかなかった。
「じゃあ、これが最後ってことかな、こうして会うことも、抱き合うことも・・」
萌はこくりと頷いた。
しばらくお互い目を合わすことなく沈黙が続いた。ふと萌に目を向けると、俺に訴えかけるような眼差しを投げかけてきた。
「ねえ課長、お願い、最後にもう一回だけ私を抱いて・・最後だから初めての時みたいに、そのままで抱かれたい・・・今日は私、安全な日だから課長を生で欲しいの、だからなにも着けないでこれをちょうだい・・」
一回目のセックス後で、萎えたままのペニスをおもむろに口に咥えた。しばらく切羽詰まったような表情で口と手で奉仕した後、十分に屹立して復活したペニスを確かめて俺に馬乗りになった。そして自分にあてがうと、激しく身体をぶつけるように一気に沈みこませてきた。萌は狂ったように俺に口づけし、身体を揺すりたてた。今まで二人で試したお気に入りの体位をせがみ、大きな声で泣き叫んだ。
いつもに増して萌の中は熱く、俺のペニスにまとわりつく感触は、今まで味わったことのない強烈なものだった。萌を奪っていく男への嫉妬と、これが最後の逢瀬、セックスであるとの思いをぶつけるように、かつてない激しいピストンで萌の下腹を打ち続けた。
「逝く、逝く、いっちゃう、もうダメーー、お願い逝って、課長も私と一緒に逝って・・中に、私の中に課長を全部ちょうだい!」
最後は萌の願いで、正常位で俺を迎えた。萌は離れまい、離すまいとばかりに俺の腰に両足を巻きつけ、下から激しく突き上げて俺の射精をせがんだ。俺も耐え切れず、萌の身体の奥深くに精を放ち、息を切らせて動きを止めた。余韻に浸るようにそのまま萌の中にとどまっていたが、しばらくしてすべてを吐き出したペニスは力なく身体の外に抜け落ちた。萌の横にどさっと仰向けに身体を投げ出して、天井の洒落た照明に目をやった。いつもなら余裕のある二回の放出だが、今日は時間を置かずの行為で疲労感が半端ではなかった。
やはり同じように放心したように天井を見つめていた萌が「アッ‥」と言って自分の股間に右手を差し入れた。そして目の前にかざした指は、溢れこぼれた俺の放った精液なのか、濡れそぼって光を放っていた。萌はしばらくそれを眺めていたが『うふっ』と含み笑いをして、指先に舌の先端を押し当て、少し舐めてから枕もとのティッシュに手を伸ばして、きれいに拭き取った。
それから数日後、お互いの携帯の番号を消し、萌は俺の前から去っていった。
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