『大丈夫なの?ケンちゃん?』
『私のは良いから‥、キャンセル出来ないの?』
宮本さんは 家に着いてからも ずっと そればっかり だった。
「まぁ良いじゃん?、買っちゃったんだから」
「それに俺、クイーンサイズなんて寝た事ないからわかんないけど、ダブルなら ツインには敵わないから絶対」
『だからって 何も‥』
「それよりさ、これなんて どう?」
「昭和感が凄いけど、外観は」
「2LDKで ペット相談可、収納も そこそこ有るよ、どうお?」
と、賃貸検索の画像を見せた。
「7階建ての6階の角部屋、どう?」
『ありがたいけどさ、大丈夫なの?』
『私は良いわよ 此処でも‥』
『でも 手伝えないわよ お金、良いの?それでも?』
「だって その部屋 ベッド置いたら 足の踏み場もないよ?」
「洋服とかドレッサーとか どうすんの?、何処に置く気?」
と、半ば強引にスマホを持たせた。
『でもさ、何処なの?ここ』
「ん?、ちょっと来てみ?」
と、ベランダに連れだした。
「たぶん アレ」
と遠くに見えるマンションを指差した。
田舎街のここら辺には 駅前は別として 7階建ては珍しい。
「駅からは少し離れるけど 会社には近くなるよ、どぅお?」
『だからって こんなに大丈夫なの?、初期費用とか』
「0に成っちゃうけどね、貯金は」
『でしょう?』
『こんな女に そんなにお金掛けて どうすんのよ?』
「ん?、こんな事」
と、不意に抱き寄せて キスをした。
「此処じゃ 誰かに見られちゃうけど、あそこなら もっと色んな事も出来るよ、きっと」
『色んな事って そんな‥』
「ベッドの上でしか した事ありません!、なんて言わないよね?まさか」
『それは まぁ、そうだけど‥』
『だからって 50過ぎてんのよ私達』
「だから何?」
「40し盛り 50ゴザむしり、って言ったんだっけ?昔の人は?、でしょ?」
『随分 古くさい事 知ってんのね?』
「6階ならさ 蚊とかも居なそうじゃん?」
『蚊とかって‥、まさか外でもする気でいるの?』
「そ、変態だもん、俺」
『変態って‥‥』
「出来ればさ 向こうに運んで欲しいよね?ベッド、それまでは こたつで我慢するからさ俺」
「はるかさん だっけ?、明日 そこまで話そうと思ってんたけど、どう思う?宮本さん」
『どう?って‥』
『なら 今晩の内に電話しとくわ はるかには、会わせたい人がいるから 一緒に行くって』
『今日はもう旦那も帰ってるだろうし、話しといて貰うわ』
で、夜の内に 連絡してもらい。
翌朝 はるかさんを訪ねて、挨拶をして、もう一度 家具屋に行って《取り置き》をお願いして、歩き始めたばかりの ほのかちゃんを連れて不動産屋をたずねた。
はるかさんも さすがに 交際0日には驚いていたが…。
そして、不動産屋さんの担当と共に
内見に行った。
外観は昭和感を越えて、俺らが生まれる前の東京オリンピック 高度成長期真っ只中!、そんな感じだった、エレベーターも年代物のが一基だけ。
が、室内は《今時》にリフォームされていて、アイランド型の流し台 シャワー付きの洗面台 風呂は追い焚き技能、そして何より各部屋にクローゼット、なんでも 和室を取り払ってリビングにしたらしい。
が、エアコンはそのリビングに1つだけ、『エアコンは各々があとから付け足した物を持ってくれば何とかなるよね?、私の引っ越し費用は私が払えるから』
と、昨夜の話しが何だったのかと思うほど 宮本さんの方が乗り気だった。
歩き始めたばかりの ほのかちゃん、そのオムツを取り替えながら 宮本さんが はしゃいでいた。
内見から不動産屋に戻る車中
「住所は どうするの?」
「俺は あそこに移すけど 宮本さんは?」
「引っ越しました此処に‥、なんて総務に提出したらバレバレだよ」
「実家とか 置かせて貰う?」
『実家はダメ、福祉とか 止められちゃうかも?、はるかの所も同じく、どうしよ?』
「だけどさ、昨日の今日で さすがに入籍とかはね?」
『うん』
『ゴメン、私も そこは まだ考えてないの‥』
「一枚の紙切れ かもだけど、男は それで覚悟が決まる!とか言うけどさ、覚悟しても 1度失敗しちゃってるしね、俺」
『アはっ 私も‥』
『でも まだまだ事実婚には 障害が有るのも確かみたいだけどね‥』
「追い追い‥、で良いですか?」
『はい』
「住民票だけは 考えてといて」
宮本さんに そう念を押して 不動産屋で説明を受けて 契約書にサインをした。
※元投稿はこちら >>