敦子はトイレから出てナツヒコが待っている本屋に入ると、その本屋もほとんど客がいなく閑散としていた。
敦子「何でこの辺だけ古いまま残しちゃったのかな…なんとなく暗いから…この本屋さんもお客さん来ないのね、あっ…ナツ」
ナツヒコ「お母さん、ちょっと読みたい本があるからまだいていいかな?」
敦子「いいよ、それじゃ私もあっちの方にいるね」
敦子はナツヒコから離れ、雑誌が置かれたコーナーで立ち読みを始めると、そこに山岸がふらふらと近づいて行く。
山岸(あぁ…奥さん…いい物見せてもらったよブフォ…だっ…ダメだ…俺もう我慢できないよ)
敦子(…ん!?…何…後ろの人、また痴漢!)
山岸は敦子の後ろに立ち、お尻を撫で敦子の耳元に囁く…
山岸「奥さん…俺だよ…この前のタクシーのブフフ」
敦子はその言葉に驚き、後ろを振り向き、その言葉を発した男を確認し、また驚いた。
敦子「…!(えっ…あのタクシーの運転手さん?…暗かったし、良く見えなかったから…こんなに…気持ち悪い人だったの…やだ)
山岸「ブフォ…また会えて嬉しいです。やっ…やっぱり、奥さん綺麗だ。また、あの時みたいにちゅうしたい…」
敦子「なっ…こんな所で何言ってるの!人を呼びますよ!離れてください」
山岸「今日…息子さんも一緒だよねぇ…奥さんが不倫してること…教えてあげようかなぁ~…それとタクシーの中での事もブフフ」
敦子「あれは不倫じゃないわよ…それに、あれはあなた達が無理矢理…」
ナツヒコが母親の異常に気付き、近づいていく…
ナツヒコ「お母さんっ…その人誰?(なんだよこのおじさん気持ち悪いな…それにお母さんにぴったり…近すぎじゃないか)」
2人は急に声を掛けられ、驚きながら敦子はナツヒコの方を向き、山岸は敦子の隣にぴったりくっつくように立ち、敦子のお尻を撫で始めた。
山岸「おっ…おじさんは、お母さんの知り合いだよ。ねっ、奥さん」
敦子「…えっ?…えぇ(くっ…ナツがいるのにお尻撫でないで…)」
山岸「これから、キミのお母さんと大事な話が…」
バッチ~ン…
敦子「いい加減にしてぇ!もう帰るよナツ」
敦子は山岸の頬に思い切り平手打ちをし、ナツヒコの手を引き、足早に去ろうとするが山岸がついてくる。
山岸「おっ…奥さんちょっと待って…痛いよ」
バン…バシバシ…
今度はナツヒコが母親を守ろうと背負っていたリュックで山岸を叩いた。
ナツヒコ「お母さんに近づくなぁ!」
その光景を見ていた周りにいた少数の人が、ざわつき始めた為、山岸は気まずくなり、何かを拾うと、その場所を逃げるように離れる。
……
………
家に帰る車内で運転中の敦子がナツヒコに話し掛けた。
敦子「ねぇ…ナツ…さっきの事…お父さんには内緒にしてて…心配させたくないの」
ナツヒコ「…いいけど…あのおじさん…なんなの?」
敦子「…ん~、私の事をナンパしてきた…まだお母さんもいけるってことかなウフフ(まさか、会うなんて驚いたわ…最悪…しかもなんか不潔で気持ち悪かったし…私…あんな人と…)」
ナツヒコ「まっ…まぁ、お母さん美人だから…」
…
……
あるタクシー会社では…
社長「お前、今日…何してたんだぁ!全然、無線に出ないし、最近の売上も全くじゃないか、この豚、さぼりやがって…お前はもうクビな!」
山岸は社長に反論することなく、黙ってタクシー会社を後にした…
山岸(ブフォ…またクビになっちゃった…でも…しばらくは無職でいいか…あのガキのリュックから落ちたこの学生証に住所が書いてあるし…ブフフ…奥さん…会いに行くからね)
……
………
次の日…
須藤家のリビングに敦子の怒声が響いていた。
敦子「絶対だめよ!そんなの…ナオ、お母さんと約束したじゃない…断りなさい…わかったわね!」
ナオヤ「…そっ…そんなに怒んなよ…ただ聞いただけだろ」
町内会の熊谷の通夜の受付を頼まれた旦那が準備をしながら、2人のやり取りを気にしていた。
旦那「なんでそんな事を言うんだ敦子、別にいいじゃないか…意地悪するなよ…お前らしくないぞ…貸してあげなさい」
敦子「でも…あなた…ほら、今日は熊谷さんのお通夜もあるし…忙しいでしょ…ね」
旦那「大丈夫だろぉ、夜には家に戻るんだしさ、ナオ…うちので良ければって連絡しなさい、じゃあ先に行ってるよ敦子」
敦子「あっ…あなた!(どっ…どうしよう…うぅ)」
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