その日、梶は藤井香子をじっくり観察してみることにした。
彼女はその日も髪を後ろに束ねて黙々とパソコンの画面に向かって仕事をしている。
梶は何気なく香子に近付いて声をかけた。
『藤井さん、例の資料そろそろできそうですか?』
梶にとってはどうでもいい資料だった。
『はい、部長。期日までには仕上がりますので、ご心配なく』
香子はまったく愛想もなく業務連絡的な対応だ。
梶は自席に戻ると香子に社内メールを送った。
『藤井さん、お疲れ様です。部長として私はあなたの仕事ぶりを高く評価しています。
話は変わりますが先ほどあなたに声をかけた際、とても良い香りがしました。
香子という名前にピッタリですね。』
メールを素早く受信した香子が鋭い視線でこちらを見ている。
ヤバい…彼女は怒っているのか。セクハラにはなっていないと思うが…
しばらくすると彼女からメールの返信があった。
『私は仕事を愛しているので、部長に仕事を評価されていることはとても嬉しいです。
ですが、個人的なことをメールされるのは困ります。』
なるほど、想定どおりの反応だな。しばらく放置するしかないか…
だが、それ以来…想定外のことが起こるようになった。
やたら彼女が私の近くを通るようになった。そのたびに良い香りが私の脳を刺激するのだ。
そしてついにそのメールが来た。
『直接…私の匂いを嗅いで欲しいです…』
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