電話を切ってから10分も経って、ようやく車を発進させた。
心情を表すような、まるでホテルに近づくのを嫌がっているような運転で のろのろとゆっくり進んだが、それでも妻は外に出ていなかった。
ドアボーイすら居ない無人の車寄せに車をつけ、ハンドルに顔をつっぷして 間接照明のオレンジの光に包まれたホテルの中を覗く。
ロビーに並んだ人影のない無人のソファーを見て、妻がまだ降りてきてすらいないことを確かめながら、さっきまでの山崎の言葉を思い出していた。
最初は恥ずかしがっていましたが、今はもう落ち着いていますよ・・・
少なくとも旦那さんが心配されていた『私が嫌われる』ってのは回避できたはずです・・・
いや、言葉の意味は ご想像にお任せしますよ・・・
山崎のプロフィールには、女の改造を目的としていると書かれていた。
肉体ではなく精神を、徹底的な快楽で変化させて行きたい。
真面目で貞淑そうな女を 見た目や容姿をそのままに、快楽のためなら変態行為まで受け入れる女に変えていく。
それこそが自分の目的なのだと書かれていた。
だから俺は山崎を選んだ。
興奮と期待とともに妻を送り出した。
そして我儘にも、興奮と期待をしたまま、後悔までし始めていた。
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