俺は逃げるように玄関に向かった。
いつもと同じ時間に玄関の扉を開きながら、姿見に自分を映す妻の後ろ姿を思い出していた。
言っていたとおり、もうすぐ家を出るのだろう。
時間は まだ7時を少し過ぎただけだ。
こんなに早い時間に・・・?
心にモヤモヤとした違和感を感じていた。
妻の姿を思い出しながら駅に向かって歩きながら、俺は もしかしたら妻の今日の相手は山崎じゃないのかもしれない・・・そう漠然と感じていた。
俺の「貸し出し」の願いにあれだけ怒り、涙を流して抵抗し、俺への憎しみを原動力にしてようやく応えた妻が、たった10日で山崎ですらない男と?
まさか、そんなはずはない・・・だいたいどうやって出会うと言うんだ・・・
ありえない・・・そんなはずはない・・・そう何度も自分に言い聞かせた。
けれど考えれば考えるほど違和感が増していく。
火曜日の朝とゆうタイミングに、どうしても中年のサラリーマンである山崎の印象を重ねられない・・・。
先週のように、たとえば「金曜のランチ」だったり、「半休をとって午後から」とか、たとえ平日のど真ん中だったとしても待ち合わせ時間が3時過だとかなら違うのだが・・・
まさか、山崎ですらない男と・・・?
ありえない・・・そんなはずはない・・・
・・・こんな時間からいったいどこに?
まだビジネスホテルですらチェックインを許さないだろう・・・
デイユースのサービスも、10時くらい過ぎないと受けられないんじゃないか?
いろんな事をグルグルと考えていた。
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