【旦那】
帰宅したのは10時を少し過ぎていた。
鍵を開けて家に入る。
靴を脱ぎながら片足ずつ廊下に足を伸ばし、そこで初めてリビングに灯りがともっているのに気づいた。
まさか・・・そんな・・・
いや、けど・・・
俺は足速に廊下を進んだ。
乱暴に扉を開いて中に入る。
「・・・ただいま」
俺は固まり、何秒もかけてようやく声を喉から絞り出した。
妻はテーブルの椅子に座り、視線を携帯から上げずに「おかえり」と答えた。
無言のまま椅子に座り、テーブルに並ぶ夕食を食べた。
心には言葉が溢れていたが、どれも声にはできなかった。
赤い口紅なんて珍しいね・・・
や、似合うよ・・・いいと思う・・・けど・・・
その服・・・どうしたんだ?・・・その・・・その、少し・・・下着が透けて・・・
・・・それに、スカートも・・・その・・・
・・・週末はどうしてた?
少し・・・や、すごく・・・心配してたんだ・・・
俺は無言で食事を済ませ、何も言わずに風呂に向かった。
妻の携帯の、メッセージの着信音と送信音に責められているような気分のまま、今にも泣き出してしまいそうなほど後悔しながら痛いくらいに勃起していた。
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