左手で扉を開くと、真っ暗な空間に 濃い青色をした細かいモザイクタイルの床が見えた。
右足を踏み出し モザイクタイルの感触を足の裏に感じた瞬間、パッと周囲が明るくなった。
それが省エネのためのセンサーが作動したのだと気づくまでの恐怖は凄まじかった。
15秒ほど動けなかった。
けれど桜は引き返さなかった。
痛いほど激しく鼓動する心臓の音を感じながらも 左足をトイレの中に進める。
数歩進んだころ、桜の背後で扉がパタンと閉まった。
シンクの並ぶ壁の大きな鏡に、全裸の女が映っていた。
熱い息を吐くたびに 大きな乳房が上下している。
その表情は卑猥に蕩け、興奮に潤んだ目で見つめている。
シンクの横からは 青い扉の個室が4つ並んでいた。
扉はどれも開いている。
個室の向かいには白い大きなタイルの壁に、小便器が5つ並んでいた。
影が桜の背中を押す。
桜はよろよろと歩き、一番奥の便器の前に立つ。
一番奥の便器にだけ備え付けられた、おそらく怪我をした生徒のためだろう銀色の太い手摺り。
それがまるで、自分を拘束するための器具のように感じていた。
ほら、先生・・・はやく・・・
(ダメ・・・ダメよ・・・そんなの・・・)
早くしろよ・・・ほら・・・
心の中に響く自分の声に抵抗しながら、桜は右手で左側の手摺りに触れた。
いいぞ、そのまま・・・
ほら、はやく・・・
小便器に背を向け、左手で右側の手摺りを掴む。
(ダメ・・・ダメよ・・・こんな・・・こんなコト・・・・)
足を曲げ、腰が ゆっくりと下がっていく。
息はさらに激しくなり、まだ触れてもいないのに小さな喘ぎ声を漏らしている。
※元投稿はこちら >>