それは背の高い太った男だった。
太ももにポケットのついた作業ズボンを履き、ネクタイを付けずにカッターシャツを着ている。
ニヤニヤと笑いながら、焦ったように小走りで離れていった浩司とは正反対の、楽しそうな足取りで近づいてくる。
さっきまで浩司の居た助手席に男が座ると、その体重に車が揺れた。
左手でエアコンの排出口を自分に向けると、俯いて震えている由美を下品な笑顔で見つめながら、悍ましい言葉で脅迫を始めた。
「お楽しみだったな・・・いやぁ、想像していたより よっぽど激しかった・・・まったく淫乱な奥さんだ・・・」
「いつもより激しかったんじゃないか?・・・よっぽど興奮してたのか・・・飢えてたのか・・・」
「もしかしてアイツに会う前の事を・・・俺との事を悦んでくれたのかな?」
男はグフフと笑い、楽しそうな声で話している。
由美が男の存在を知ったのは今日が初めてだった。
週末に会えなかったせいか、家事が手に突かないほど朝から疼いていた由美が、いつもよりも早い時間に車を停めた。
そして昼休みのチャイムが鳴る1時間ほど前・・・今と同じように、男が裏門から出てきた。
最初は何も思わなかった。
これほど露骨に逢瀬を重ねておきながら、誰かに見られているなど思いもしていなかったからだ。
車に近づいてくる男を不審に思った。
運転席側のガラスをノックされ、怖いと思いながら窓を下げた。
そしてニヤニヤと笑う男の言葉に、心臓が締め付けられるほど驚いた。
「奥さん、今日もアイツに会いに来たのか?まったく毎週毎週、お盛んなことで・・・」
「いやなに、誰かにばらそうって言ってるんじゃないよ・・・撮った写真をばら撒きもしない・・・」
「ただちょっと、俺も仲間に入れないかと思ってね・・・俺が何を言ってるか、賢い奥さんなら分かるよな?」
「ちょっとでいいんだ・・・それで何も問題はおこらない・・・そうだろう?」
「奥さんさえ協力してくれれば 学校中に写真がばら撒かれる事もないし、何も問題は起こらない・・・」
「ちょっとでいいんだよ・・・ちょっとだけ協力してくれれば、」
「・・・わかるよね?奥さん」
※元投稿はこちら >>