美香の身体を自由にできる部長。
だから、部長は自分にとって嫉妬の対象だった。
夜になると、部長と美香が全裸で抱き合いことを妄想し、頭の中に美香の喘ぎ声が聞こえてくるたびにパンツの中の僕のぺニスは固くなった。
部長は若い頃に前妻と結婚し、苦労してお金を溜め、庭付きの大きな家を建てた。何度も遊びに行ったことはあるが、緑眩しい芝生の庭、そして二階にはいくつも部屋があるようなとても広い家。その広い家に彼は今、奥さんと離婚して1人で暮らしている。
離婚の理由は悲しいながら、子供ができなかったこと。奥さんの不妊体質で子供が出来ず、二人とも頑張ったが、結局、子供が出来なかった。庭も二階の部屋も、すべてこれから作り上げる幸せのために…子供たちと過ごす時間のために作ったモノだった。
その部長の気持ちは良く知っているし、今の部長の前向きな姿勢は十分すごいと思う。仕事もできる。リーダーとしてのスキルも高い。そして、その気さくな人柄と人間性も素晴らしい。なので、部長は部下の人望が厚かった。
部長の趣味は料理で、週末ともなると、部下の何人かを自宅に招いてギョーザパーティーをした。部長の作るギョーザは美味しくて、部下の女性にはとても評判が高かった。お酒好きでお酒にも詳しい。一度、お酒談義が始まると蘊蓄が止まらない。特にビールが好きで、「ギョーザにはこのビールが合うんだ」って言って、部長が目利きしたクラフトビールをたらふくとご馳走してくれた。
ギョーザパーティーの日はいつも、夜遅くまで酔っぱらい達の楽しげな声や笑い声が部屋に響く。夜の解放感とお酒の勢いで楽しくなって、帰りには、「今日は部長の家に泊まるから…いいでしょ、部長?」と部長に腕組みしながら言い出す酔っぱらいの女性が一人二人は必ず出てくる。
部長は決まって、「変な噂が立つのは嫌だから、大山くん。君もこの子たちと一緒に泊まってくれない?僕がこの子たちに何もしなかったという証人になってくれないかな?」と美香に冗談めかして言う。
美香は笑いながら、「私は泊まれませんよ。私は絶対に家に帰ります。でも、部長、いいじゃないですか?泊めさせてあげたら…どうせ何もしないんでしょ?」
部長はその言葉を聞くと、「今日は解散だ。みんな気をつけて帰って。タクシー代ないんだったら貸して上げるから、皆、ちゃんと家まで帰るんだよ」。
部長宅から駅までの帰り道、道路脇に黒のポルシェ・カイエンが停まる。美香は主人の車に乗り込み、「皆、気をつけて帰ってね」と言い残すと、車で自宅へ帰っていく。
僕は酔って重い足を引きずりながら、決して近くはない駅まで歩き、そこから決して近くはない自宅まで1時間かけて帰宅する。最初にいた女の子の何人かは帰りの電車の中に何故かいなくて、心配して後で聞いたら、部長の家で粘って粘って、泊まらせてもらったらしい。
そこで、何があったかはしらないし、気にもならない。部長も未婚だし、女の子も全員未婚だから、何があっても別に問題ないわけだしね。
そうした日々が流れ、今年も恒例の夏の部内旅行に行くことになった。この旅行、そもそも3年前は無かったんだけと、2年前から部署の恒例行事になっていた。
(これって、つまり…部長が美香と公的に旅行に行きたいから。)
皆、それは何となく気づいていたが、それは暗黙の了解になっていた。それに、若い子たちは、お互いにそこで想いのある子とのハプニングだって期待できるし、参加すればとにかく楽しいという噂で沢山の男女が参加する行事だった。
部署の女の子が毎年、行き先を企画する。今でこそ、グランピングという言葉が良く使われるが、その当時はグランピングは今ほどは周知されていなかった。SNSでグランピングを見つけ、「ここよくないですか?ここに行きましょう」、という方向で今年は話が盛り上がり、夏旅行は避暑地でのグランピングということになった。
部内の女の子、鈴ちゃんが僕に声をかけてくる。
「課長、旅行行きます?」
「行くよ。鈴ちゃんは?」
「課長が行くんだったら私も行きます。泳いだりしたいんですけど、課長も一緒にどうですか?」
「もちろん。いいよ。」
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高速道路に乗り、車を走らせて2時間。海岸線を走る。左手には真っ青な海が見える。山側へハンドルを切り、小高い丘にあるグランピングビレッジに着く。男が8人、女の子が14人。もちろん部長も美香,そして僕もいる。
目的地について、それぞれのドームに荷物を置く。これから夕御飯までの4時間、思い思いに時間を過ごす。海水浴、森林浴、ハンモックやキャビネットで読書をしたり、昼からお酒を嗜みながらゆっくりする人達。
僕は4人用のドームに荷物を置き、水着に着替え、Tシャツを羽織り、外のハンモックに横たわる。自然の揺れに身を任せると少し眠くなってくる。
青い空が真上に見える。横に目をやると、美香の姿が見えた。白いTシャツにホットパンツをはいた美香がベンチに座っている。美香の周りには、たくさんの男女がいて、談笑している。美香は手を引かれながら、海へと向かう。
「課長、課長」。声をかけられ、驚きながら目を上げると、鈴ちゃんと沖千夏ちゃんが立っていた。
「課長、海、行きませんか?」
鈴ちゃんはオレンジのビキニの上に、沖ちゃんは白のビキニの上にTシャツを羽織っている。
「ああ、行こうか」。軽い傾斜を下るとすぐに白い砂浜が見えてくる。ビーチマットを引き、レンタルしたパラソルを立てる。もうすでに泳いでいる社員もいる。
「課長、行こうよ」。鈴ちゃんはTシャツを脱ぐ。オレンジ色のビキニ。Eカップはあるその2つの豊満な膨らみに目が引かれる。鈴ちゃんは僕の手を引く。
「ごめん。鈴ちゃん、少し眠いから俺、ここにいるわ。先行っておいで。」
「そうなんですか…じゃあ、先に行きますね。千夏、行こうや」
キャキャといいながら、砂浜を走り海に飛び込む鈴ちゃんを見ながら、海辺の美香を探す。美香はホットパンツを履いたまま、ビーチマットに座り、笑顔で皆を見つめていた。その横顔を見ながら、日頃の疲れのせいで眠ってしまった。
「課長、課長、起きてください」。肩を揺さぶられる感じがして、目をそっと開けると、横に鈴ちゃんが寝ていた。
「課長…海、行かへんの?気持ちいいですよ」
「鈴ちゃんか…ああ、今日はいいわ」
そういうと、鈴ちゃんが耳元に口を近づけ、耳たぶにキスをしながら、
「一くん、今日の夜は鈴のこと、おもいっきり可愛いがってくださいね」
そういうと、鈴ちゃんはまた砂浜に駆け出して行った。鈴ちゃんと僕は人知れず1年前から大人の関係になっていた。
(続)
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