閑静な住宅街は夜の帳が下ろされ、ひっそりと静かに息をしている。車の中から、ぽつりぽつりとついた街灯を数えるように見つめる。車は狭い道を抜け、大通りに出ると、先を急ぐように加速していく。いつも二人が使う1号線沿いのホテルまでは遠いので、S市の近くのホテルに入ることにした。自宅から近いこんなところは、昼間ならば決してここは使うことはないが、夜であれば誰にも見つかることはない。
「時間がないから、ここにしよう」
車は左折しホテルのビニールカーテンを潜っていく。駐車場は部屋割りになっていて、車を停めればチェックインしたことになる。ゆうに50台は停められる駐車場は車でほぼ一杯になっている。私は車から一旦降りると、空いている部屋を探す。
…こういうところに来ると思うのよね…セックスなんて特別なことじゃない…みんなやってるんだって。
駐車場の中をうろうろする。サウナ付き、和室仕様。中には、SM部屋付きなんて部屋もある。
…こういうところは宿泊料金が高くて、特別にあしらえた部屋から案外と埋まっていくのよね
空いた部屋の中から彼に部屋を選んでもらい、車を停める。部屋の案内板のライトが消え、青いランプが赤へと変わる。車から降り、ホテルの中へと入る。受付で鍵を受け取り、エレベーターで3階まで行き、ルームライトが点滅している部屋へ入る。たまに主人とラブホテルに行くことはあったけど、ここは初めて来た。私はラブホテルの放つ空気感が本当は好きではない。どちらかというと嫌い。玄関のドアだって安っぽいし、ベッドだってふかふかじゃないし、おまけに、なんで、ラブホテルの掛け布団ってあんなにパリパリしてるの?私の肌に合う気持ちいいベッドがあったことなんて一度もない。たまにタバコ臭い部屋だってあるし…なにより清潔な感じがしない。毎日毎日、何回も何組もの男女がこのベッドの上でオチンチンとオマンコを繋ぎ合わせている。おまけに、シーツは変えていても、ベッドの上で何をしてるか分かったもんじゃない。だから、ベッド自体は汚れてるの…こんなとこで泊まる気分には絶対になれない。朝まで気持ち良く寝れるわけないもの。たんなる、セックスを楽しむ場所。それ以上でもないし、それ未満でもない場所。男の人はホテルに入るとニコニコしているけど、私は笑えない。やることやって早く帰ろうって思う。それから、最近は部屋に電マが良く置いてあるんだけど、それを使おうとする男。
…やめて、汚いから。使うんだったら私専用にして。バイブだってもちろんそうよ。
あとは、部屋で売ってる大人のオモチャを買おうとする男。
…前にあったけど、買ったのはいいけど電池がないとか、使い方がわからないとかって、あたふたしているのを見ると冷めるのよね。おまけに、使い慣れていないから、やってもらっても気持ち良くないし。やるんだったら、使いなれたオモチャとか、ホテルに来る前に買って来たオモチャ使ってね
お話が寄り道しちゃったわね。彼、スッゴいしたそうだし、それじゃ。
(続)
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