慣れてしまうって怖い。それは、私は体験をもって感じている。
私は朝陽くんに「まあちゃんたちが寝てるときに、家でこっそりとセックスするのは、もう止めましょう…もうそんなことしなくてもいいから」と伝えた。
勿論、私のやっていることは許されることではない。それを頭では理解していながら、その道を歩き始めたし、その歩みを今は止めることができない、止めたくはなかった。
沸き起こる快感の声を圧し殺し、息苦しささえ覚えながら自宅で身体を交えることは大きなストレスだった。危険な関係を始めたばかりの頃は、それでも良かったが、今では、まあちゃんの存在を近くに感じながらセックスするようなリスキーなことはしない。
今日もまあちゃんはママ友の家に遊びにいっている。「ママ…夕御飯、食べてかえるから。朝陽くんと二人で食べてて。帰りは朝陽に迎えにきてもらうから」と言い残して、大きなバッグを手に出ていった。
あらかたの家事をすませ、全ての部屋を掃除する。洗濯物の中に小さな赤ちゃんの手袋や靴下を見つける。私の手のひらにすっぽり収まるような小さな手袋と靴下。あまりの小ささが可愛くて手にとって、ぐっと握りしめたり、表裏と見ながら思わず頬擦りしてしまう。
ガチャガチャと玄関の扉が開く音がした。夕方になり朝陽くんが仕事から帰って来た。
「朝陽くん、お帰り。」
「お義母さん…帰りました。まあちゃんは?もうでましたか…ママ友のとこですよね」
「そう、嬉しそうに出ていったわ…夕御飯もまた向こうの家でご馳走になるんだって…あっ、そうそう、帰りは迎えに来てだってよ」
「僕のラインにもそう入ってました。まあちゃんから連絡あるまで二人ですね…外、暑いですよ。汗かいたから先にシャワー浴びてもいいですか?お義母さんも一緒に入ります?」
「いいわよ、先に行ってて。後で私も軽く浴びるから」
(朝陽くん…今日もゆっくり楽しめそうね。)
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季節はまだ夏。リビングのレースのカーテンからは青い光が差し込み、ソファーのところどころに淡い波紋をつくりながら動いている。部屋の中は蒸し暑いというわけではないけど、締め切ってしまうと、すぐに室温が上がっていく。
じっとしていると、でうっすらと背中に汗をかいてしまう。厚めのホワイトグレーの遮光カーテンを締め、クーラーの電源を入れる。私の部屋にはクーラーがない。暑い部屋の中で抱き合うのは嫌なので、リビングの床へ、最近購入したマットをひく。
下半身にベージュのタオルを巻き付けただけの格好で朝陽くんが浴室から出てくる。相変わらず贅肉のない、端正の取れた身体付きは綺麗です。冷蔵庫からスポーツドリンクを取り出し、ソファーにどかっと座ると、ゴクゴクと喉を鳴らしながら飲み始めた。
それを見て、私も浴室に向かう。髪の毛は濡らさず、シャワーだけで軽く身体の汗を流す。身体の水気を拭き、ベージュのバスタオルを身体に巻き付け、リビングへと向かう。そんなに大きいタオルではないので、太ももの半分から下は隠れていない。途中、冷蔵庫から同じくスポーツドリンクを取り出し、ごくっと一口飲む。口の端からドリンクがもれて、一筋の線となって私の上半身をツーっと流れていった。
(続)
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