日曜日の10時
俺は駅前に立っていた。
昨夜、どうやって寝付いたかも覚えていないほど 緊張していたし興奮していた。
クラクションの音に振り返ると、白い乗用車の運転席から 由美さんが手を振っていた。
近づくと由美さんは体を倒し、手を伸ばしてドアを開けた。
「さ、乗って」
「ど、、、どこに行くの?」
由美さんは何も答えず、少しだけ微笑んだ。
そして真剣な表情で前を向くと車を発進させた。
車は幹線道路を進み、橋を渡って林道に入った。
山道を30分も進んでいくと 道路標識には隣県までの距離を示す表示がチラホラと混ざり始めた。
俺は無言の車内に耐え切れず、由美さんに話しかけた。
「・・・どこに向かってるの?・・・ね・・・由美さん・・・ねえってば・・・」
「裕樹くん・・・」
「・・・?」
「ごめんなさい・・・ちょっと黙ってて・・・」
「・・・・」
「・・・私、あまり車を運転しないの・・・危ないから話しかけちゃダメ・・・わかった?」
・・・まずい・・・これは非常にマズい・・・
ある意味で人生初の・・・リアルな『生命の危機』だ・・・
そう思った俺は、それまでとは違う意味で緊張しながら前を向いた。
黙ったまま、由美さんを刺激しないように固まっていた。
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