「もしも~し」
そんな声を聞いて我に返った。
鼻にかかった、甘えるような声だった。
自分に話しかけられたのかと思ってドキドキした。
「あ、中島?今、病院に来てるの、そう、そう言ってたアレ・・・うん」
(何て場所で!)
私はカッとなった。
一瞬で、また少女を軽蔑した。
(こんな場所で・・・病院の中で平気で電話を使うなんて!)
けれど、咄嗟に声が出なかった。
注意しなくてはいけない・・・そう強く思った。
けれど同時に、今の私はいつも通りの声を出せるのだろうかと不安になった。
顔が熱い・・・息が荒い・・・心臓がドキドキしている理由は、さっきの驚きだけじゃない・・・
私の戸惑いを・・・逡巡をあざ笑うかのように、少女は電話で話し続けた。
そして悪魔のような計画を、私の耳に届けていった。
「そう・・・言ってた陣内っていう女の医者・・・見つけたの・・・」
(見つけた?私を探していた?何のために?)
「大丈夫よ・・・真面目そうだし、簡単に騙せるわ・・・ん~・・・『お願いだから知恵を貸してほしい』とか?」
(騙す・・・?私を・・・騙して連れ出す?どこに?どうして?)
「分かるのよ・・・あの女、表面は真面目だけど中身は違うわ・・・分かるのよ・・・」
少女の話が進むにつれ、私は何も考えられなくなっていった。
息がどんどん荒くなっていく。
心臓の鼓動が煩い。
顔が熱い。
電話を終えた少女がカーテンを引き開けた時、私はどんな顔をしていたのだろうか。
少女は、その若さからは想像もできないほど艶やかに微笑んでいた。
私を見つめ、満足そうに頷いていた。
そして、電話で話していた通りの嘘で私を騙した。
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