4時間目の授業終わり、65分の昼休み。
短い休憩時間と違い、そのままクラスで弁当を広げる者もいる。
それでも生徒の半数近くが、優子と同じようにチャイムと同時に廊下に溢れた。
ある者は学食に向かい、ある者は友人とトイレに向かう。
目的地のある生徒たちは、残念ながら優子の異変に気を回す余裕を持てなかった。
優子は生徒の行きかう廊下を、いつもと変わらない足取りで進んでいく。
顔にはいくつもの筋がテカテカと光っている。
歩く振動で、顔に残った雫がゆっくりと顎に向かって伝っていった。
2センチほどに育った雫が、顎の先でプラプラと揺れていた。
優子は角を曲がり、渡り廊下を進んで別棟に入る。
5メートルほど後ろに続く、中島を誘導するように進んでいくと、校舎の裏・・・人気のない公衆トイレに入っていった。
それは生徒のためというよりも、学校に出入りする業者のためのトイレだった。
グラウンド整備や植栽の剪定、備品や資材の納入など、学校に出入りする他人は少なくない。
入り口の扉に男女の表記は無く、おそらく学校で唯一の共同便所。
だが、男性の利用する可能性のある公衆便所を使う女子生徒は居るはずがない。
そもそも木が生えてるだけの校舎の裏側、グラウンドや部室からも遠いこんな場所のトイレなど、存在自体を知らない。
そんな、学校の中でも少し特殊な空間に、セーラー服が入っていった。
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