週末からずっと落ち着かなくて、居ても立っても居られない気分だった。
妻の顔をまともに見ることもできず、地獄のような時間を過ごした。
そして水曜日の朝は、いつもよりも早く家を出た。
いつもの、妻の「いってらっしゃい」の言葉さえも待たずに、逃げるようにバタバタと玄関の扉から逃げ出した。
限界だった。
今日だと・・・あと数時間だと考えただけで、息苦しくなった。
いつもよりも早く家を出たのに、通いなれた通勤路を間違え、いつもの駅を乗り過ごした。
結局、会社に着いたのはいつもよりも遅い時間だった。
そしてようやくたどり着いた会社でも、何かにつけてミスを連発した。
時間が経つにつれ、パソコンの画面を見るよりも壁の時計を見る時間の方が長くなっていった。
そんな風に、あの夜に聞いた『水曜日の10時』を迎えた。
10時を過ぎた後は、さらなる地獄が待っていた。
何もしていなくても鼓動が激しくなり、汗ばんでします。
パソコンの操作ができはいほど指が震える。
1秒を長く感じ、1分が1時間にも思えた。
いつもは短すぎると感じる昼休みが終わる頃には、まるで徹夜あけのように疲れ切っていた。
そんな俺は、よほど酷い顔をしていたのだろう。
2時になるよりも前に、上司から早退しろと言われてしまった。
一度は大丈夫ですと断ったが、強引に会社を追い出された。
普通では考えられない時間に家を出た俺は、いつもと同じ通勤路を歩き、いつもと違う駅で電車を降りた。
それは週末、ハプニングバーに通うために降りる駅だった。
女は駅の名を言わなかった。
ただ『駅前のビジネスホテル』と言っただけ・・・なのに山崎との会話が成立していた。
つまり、そのホテルとはここんんだろう・・・そう思いながら、ハプニングバーから一番近い駅のロータリーに立ち、交差点の向こうに立つビジネスホテルを見上げた。
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