雪江は性欲が強い方ではないと思っているが、セックスでの感度は良く、前戯では何度も逝かされる。ただ、挿入されてこれからという段階で、相手は終わってしまうのだ。
それでも、それで欲求不満になり、次々と違う男性を求めてサイトに登録していた訳ではない。
どちらかと言えば、家族を裏切るこういう出会いを、もう止めようとさえ思ってはいたが、サイトの日記を徘徊するのが最近では楽しくなってもいた。
毎日、暇があるとサイトを覗き、女性が綴る体験談や、男性の投稿する官能小説を読み漁ることが多くなった。
婚外恋愛で満たされている女性の日記を読んで羨ましく思ったり、官能小説を読んで自分の知らない性の倒錯感を味わったりして楽しんでいた。
特に女性の調教日記を読み、ご主人様に逝き狂わされる自分を妄想し、一人股間を熱くすることが多くなっていった。
そんな時はトイレに籠って、自分で慰めるようになり、それが日を追って多くなっていき、自分は淫乱な女ではないかと恥ずかしくなった。
これまで会って関係を持った男性たちからは、何度もまた会いたいとメールは来たが、雪江は何故か彼らと再びセックスしたいとは思わなかった。
何度も会ってしまうと、夫を完全に裏切ってしまうという概念もあったが、それ以上に彼らとのセックスに魅力を感じなかった。
身体はどうしようもなく疼くのに、それを満たす術を雪江は知らなかった。セックスで満たされないとしたら、一体どうしたらいいのか雪江は途方に暮れた。
そんな時、珍しく歳上の男性と知り合い、初めて犯されているかの様な荒々しいセックスを経験した。
その男性と何度かメールをやり取りし、メールの内容も怪しい感じがしなかったので、何となく年上もたまに良いかと思い、特に警戒することもなく会う約束をした。
雪江は男性と知り合っても、自分の素性は一切明かさなかったし、連絡手段はサイトのメールだけだったので、もし会って気に入らなければブロックしてしまえばいいだけだと安易に考えてもいた。
約束した待ち合わせ場所のスーパーに車で出かけ、自分の車を駐車場の端に止めてから、指定された場所に歩いて行くと、知らされていた車種の黒いセダンが既に停まっていた。
運転席の男性が、車に近寄ってきた雪江を見て、助手席側の窓を開けて挨拶してきた。
「こんにちは、佐藤です。YURIさんですよね?」
雪江は、サイトではYURIというハンドルネームを使っていた。
「はい、はじめまして」
「あっ、はじめまして。どうぞ乗って下さい」
素性も知らない初めて会った男性の車に乗ることは、普通では危険極まりないことなのだが、これまで会って来た男性とは特に問題もなかったので、雪江は警戒心もなく車に乗り込んだ。
車の中は雑然としていて、煙草の匂いも気になったが、それ以上に間近で見た男の雰囲気に何となく嫌な感じがした。
佐藤は雪江より5歳年上で、建設業という仕事柄、身体もガッシリしており、小柄な雪江は威圧感を覚えた。
そして何より嫌だったのは、車に乗り込んできた雪江を、品定めをするかのように全身を舐め回すように見られたことだった。
雪江の本能が
『この男に付いて行っちゃダメッ!』
と、警告するのだったが、蛇に睨まれた蛙のように委縮し俯いてしまう雪江だった。
「それじゃあ、行きますか」
佐藤は何処へ行くかも告げずに、黙って俯いている雪江の同意も得ずに車を発進させた。
(続く)
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