・・・・・・コン・・・・・コンコン・・・・
それは寝室の・・・今では俺だけの部屋になった寝室の扉を ノックする音。
俺はゆっくりと上半身を起こし、のそのそとベッドから降りる。
(・・・嫌だ・・・ダメだ・・・)
そう思いながら、扉に向かってゆっくりと歩く。
扉を開けると、もちろん妻が立っていた。
ただその姿はいつもの部屋着ではなく、コート姿だった。
黒いロングコードの首元まで、全てのボタンを締めている。
そして少し言いずらそうに・・・バツが悪そうに話し始めた。
「・・・・あ・・・・あーーー・・・・・あのさ・・・」
少し言いずらそうだったが、口調はいつもの妻だった。
その声も、いつもと変わらないように感じた。
けれど俺は知っている・・・
妻が今から何を言おうとしているのか・・・
そしてその言い訳の裏側に何があるのか・・・
・・・だからかもしれない。
その表情に、バツが悪そうなだけではなく・・・・興奮の・・・まさに、たった数時間前にしていたような、欲望の色を感じていた。
「あのさ・・・・・ちょっと出てくるわ・・・・・・・・ちょっと、買い物・・・・」
言い終わるよりも前に、妻は視線を逸らしていた。
俺は心臓が締め付けられる気分で・・・けれど口は「そうか」と言っていた。
「・・・・あ・・・・・・・・ちょっと、時間・・・かかるかも・・・・」
「・・・・・・うん」
「・・・・・・・・できるだけ早く帰るから・・・・・・・・けど、ちょっと時間かかる・・・・・と思う・・・かな・・・」
「・・・・・・・・・・・うん」
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