気づくと、俺はリビングで1人だった。
ソファーに横たわったまま、気絶するように寝てしまっていたらしい。
昨夜の光景が嘘のように、テーブルの上の皿やグラスは綺麗に片づけられていた。
(あれは・・・夢・・・・・・ではない・・・・)
俺はソファーに座り直し、一人で絶望にくれた。
夢であってほしいと願った。
けれどガチガチに乾いたズボンの中の精液が、あの全てが現実だったのだと証明していた。
キッチンから水の音が聞こえてきていた。
立ちあがり、わざとノソノソと足音を立てながら音の方に進んだ。
そして頭を掻きながら、出来るだけ気怠そうな声を作り、妻に話しかけた。
「・・・・お・・・・・おはよう・・・」
妻は俺を振り返らず、水の音をさせたまま返事をする。
「何が「おはよう」よ、もうお昼過ぎたわよ?・・・・まったく、いつまで寝てんのよ」
いつもと同じようなセリフ・・・けれど、いつもよりも少し不自然に強張った声に感じてしまう。
「あ・・・・あの・・・・・・・健二は?」
他に話題が見つけられず、俺は後輩の名前を口にした。
そして、その名を声にした瞬間に、自分の中で緊張が高まるのを感じた。
「・・・・・・帰ったわよ・・・・・・お・・・覚えてないの?昨日、あの後・・・すぐに帰ったわよ」
・・・嘘だ・・・
そう直感するのに充分な動揺が伝わってきた。
緊張と背徳・・・いろんな感情が、その声に混じっているのを感じた。
けれど俺は、そんな妻の言葉を・・・嘘を、そのまま受け入れた。
「・・・そうか」
そう言って、まだ寝ぼけているフリをしながら、興奮に頭の中を熱くしたまま、寝室に逃げた。
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