克司はオナニーで逝ってしまった妻に手を貸し、そっとお湯の中に座らせた。
妻の身体は、夜風に当たりかなり冷えてしまっている。
克司が腕と肩を抱いてやった時は、鳥肌も出ていた。
少し可哀想になったが、今オナニーショーをさせたことに後悔はなかった。
妻は寒かったかもしれない。
そしてもちろん恥ずかしかっただろう。
それらを合わせて、俺のために、自分の意志でしてくれたのだ。
もちろん限度を越えての事はさせていない。
これは俺と妻のSMで、妻がご主人様である俺の命令に従って俺を興奮させ喜ばせてくれ、自分もそれで興奮できたんだ。
ちょっと非日常的で過酷だったかもしれないが、夫婦の為には良かった。
そう克司は思っていた。
妻をお湯の中にしゃがませた時、そっと耳元で
「可愛かったぞ。
寒かったろう。よく頑張ってくれたな。」
と労いの言葉をかけてやった。
蓉子には、そんな葛藤は無かった。
オナニーショーを命じられて、恥ずかしいし寒くもあった。
夫から寒さの中に晒されることさえ、蓉子にとっては甘美だったのだ。
そして夫から可愛いと労りの言葉を聞かせてもらえた。
ただ幸せだった。
克司は妻の剃毛に使った道具を集めてタオルにで包み、温泉から上がるために妻の手を引いて脱衣場の方へと向かおうとした。
蓉子も夫に手を引かれながら、気だるい足取りで数歩歩いた。
その時、克司は愕然とした。
蓉子も小さく声をあげた。
二人の歩いて行く先、脱衣場に近いお湯の中に、二人の人影を見つけたのだ。
見られていた!
目が慣れてくると、高齢の男女だと分かる。
もう一組の泊まり客とは、この人達だったのか。
いつから見られていたのだろう?
剃毛は洞窟の中だから見られてはいないだろう。
妻にオナニーショーをさせている時からか?
オナニーが終わった妻を、お湯の中に入れた時からか?
自然に克司は、妻の身体を守り、隠すかのように蓉子の前に立った。
蓉子は両手で胸と、今は幼い娘のようになった下腹を押さえて前かがみになる。
二人は、自分達の夫婦の秘め事を見たかもしれない相手に対し、警戒心を露にし緊張の糸を張り詰めさせていた。
しかし、その緊張は相手の人からの、穏やかな挨拶で直ぐに途切れた。
「今晩は。夜の温泉も良いものですな。」
高齢で落ち着いた男性の声だった。
そこに、批難や軽蔑等の色はなかった。
克司は緊張を解き、挨拶を返した。
多分この高齢の夫婦は、つい今しがた温泉に入ってきたのだろう。
きっと妻のオナニーショーなどは、見ていないだろう。
そう思えた。
湯煙を通して相手の顔が見えるようになると、あちらのご夫婦は、二人とも楽しげに微笑んでいるのが分かった。
まだ緊張して足がブルブル震えている妻の手を引いたまま、克司は軽く会釈して二人の横を通り過ぎようとした。
すると急に、高齢の奥さんの方が、蓉子に声を掛けてきたのだ。
「奥さん、旦那さんにいっぱい可愛いがって良いわね。
羨ましいわ。」
明らかに、この、老夫婦は自分達の痴態を見てしまってる!
克司はそれを確信した。
蓉子は、ついにその場にしゃがみこんだ。
しかし、老夫婦の口調にはそれを軽蔑したり批難したりする気配は全く無かった。
老婦人の方が言葉を続けた。
「私も若い時に、この人から、あんな風に担がれて見たかったわ。
旦那さんが逞し言って本当に素敵ね。」
そう言って自分の夫の方を見た老婦人の顔は、昔の夫との夫婦の楽しかった秘め事を思い出しているようだった。
「いや、わしだってお前を抱き上げて歩いたりしてやったじゃないか。」
夫の方も、自分の妻に笑い返したのだった。
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