新婚の頃、まだか細かった蓉子を、克司はお姫様ダッコして狭い家の廊下を歩いたものだ。
しかし今、蓉子はお姫様ではなく、奴隷として相応しい形として、夫の肩に担がれている。
蓉子の頭は、夫の背中に逆さに向いているし、両足はぶらぶらとなるところを、夫が逞しい腕で抱え込んで、蓉子が頭を下にして落ちるのを防いでくれている。
もし蓉子が逃げようと暴れれば、夫は空いてる方の逞しい腕で、蓉子のお尻を平手で力いっぱい叩くことだろう。
夫は蓉子を担いで、太股くらいの深さのお湯を掻き分けながら歩いて行く。
こんな逞しい男の人が..、私の夫。ご主人様..。
これまで20年も一緒に生活していて、なぜ気がつかなかったのかしら。
今克司が力を抜けば、蓉子は逆さまに頭をお湯に落ちることになる。
その原始的な恐ろしさは、スリルと言うには強すぎた。
今、私はご主人様に命を握られてる..。
蓉子はその考えに陶酔した。
いつの間にか、それはいやらしい妄想等よりもっと崇高な感情になった。
私は、この人..、ご主人様に、従って生きます。
おっしゃる事には、けして逆らいません。
どうぞ私を、好きにお使いくださいませ..。
蓉子は夫から担がれてながら、そのような言葉を、口から呟いていた。
それは、信じる者への誓いのようだった。
※元投稿はこちら >>