身体を拭いて衣装棚からショーツ取り出そうとした時、蓉子は棚の中の浴衣の置き方に違和感を感じた。
私が軽く畳んで入れた時と違ってる?
もしかしたら!
不安は的中した。
蓉子が浴衣の奥に小さく丸めて置いてあったベージュのショーツが無い。
ひとりでに無くなる訳は無い。
誰かに盗まれたのだ。
蓉子の泣きそうな顔を見て、克司がどうしたのかと声を掛けた。
しかし蓉子は、私のパンツが盗まれた、と言葉に出して言えなかった。
泣きそうな顔を横に振って、ただ一つ残っている着物、浴衣を羽織ったのだった。
克司も妻が受けた被害を理解した。
パンツ泥棒と言うのがある、とは知っていたが、先に上がった若者カップルの女の子が穿いてた様なティーバッグ等が盗まれるのだと思い込んでいたから、克司自身も、自分の妻のごく地味なおばさんパンツが盗まれた事に軽くショックを感じた。
「部屋に戻ったら、穿き替えは持って来てるか?」
「はい..」
「仕方ない。
部屋までノーパンで戻ろう。
俺が先に歩くから、後を着いてこい。」
蓉子は夫が頼もしかった。
もしかしたら、私のショーツを盗んだ人が、私を襲おうと思って、まだ近くで待ち構えてるかもしれない。
もし、そうだったら..。
私一人なら、恥ずかしさと恐さで動けないところだった。
蓉子は夫の浴衣の袖にしがみつくようにして、部屋まで戻った。
部屋に戻ると、蓉子は急いで穿き替えのショーツを穿いた。
やっとほっとする安心感と言うか、いつもに近い落ち着いた気持ちが戻ってきた。
夫にお茶を入れ、夕食までの一時、夫婦での雑談した。
僅かな間に、例え友達にでもとても言えない様な事が連続してあった。
初めての混浴で肌を他人に見せた事への緊張。
あの若いカップルのこと。
熟年夫婦のこと。
そして、パンツ泥棒のこと。
克司が若いカップルの女の子に陰毛が無かった事や、それを相手の若い男性が剃ってやったらしいこと等を話題にした後、しばらく沈黙してこう言った。
「俺だって、可愛いお前のあそこの毛を、剃ってみたいと思うよ。
俺の妻は、他の女性と違うんだ。
俺だけの物だ、って印にね。」
ああ、夫は..、私の夫、ご主人様は、私の陰毛を剃ってみたいんだわ。
克司はちょっと間を置いて続けた。
「お前、剃らせてくれないか?」
やっぱり..、そうだわ...。
蓉子は、自然に自分の唇がわなわなと震えるのが分かった。
その唇から出た自分の声が、遠くから聞こえるようだった。
「良いわ...」
克司は、従順な妻の事だから、最後は受け入れてくれるだろうとは思っていたが、これ程直ぐに返事をしてもらえるとは意外だった。
さらに蓉子の口から、意外な言葉が続いた。
「もし貴方が、さっきみたいに、ずっと私の側にいて守ってくださるのなら...」
「私、剃られたところを、他の人に晒しても...」
そこまで言うと、蓉子は自分の言った言葉の恥ずかしさから、両手で顔を覆うと、がばっとテーブルに顔を伏せた。
ああ、何故私ったら..、晒すだなんて..。
見せても良いって普通に言えば良かったのに!
晒すだなんて、本当に自分がいやらしい奴隷だって言ってるみたいじゃないの!
恥ずかしさのあまり、顔から火が出る程だったが、同時に穿き替えたばかりの新しいショーツが、ジュッと湿ってしまったのを感じてしまった。
その後、二人は旅館の浴衣に半纏と言う姿で、旅館の近くを散策した。
雑貨屋を見つけると、克司は先の尖ったハサミを買った。
妻の陰毛を剃る時、長いまま剃ると剃刀に毛が絡み付いて、なかなか剃り憎いらしい。
そうならない為に、まず毛足の長い毛はハサミでカットしてしまい、それから自分の髭剃り用二枚刃の剃刀を使うつもりだった。
蓉子は夫から剃刀を使ってもらう時に肌に塗ってもらう女性用のシェービングローションと細かい部分を処理してもらう為の女性用の無駄毛処理用剃刀、そして新しいショーツを一枚買った。
混浴風呂の脱衣室で、その時穿いて来たショーツを盗まれたから、もう穿き替えはない。
今でもいやらしい汁で湿らせてしまっているのに、これでは明日帰る時までに、もっと汚してしまい、車の中とかで、夫に変な臭いを感じさせないとも限らない。
そう思っての慎ましい蓉子らしい心使いだった。
しかし、その雑貨屋には、蓉子が求める股上の長い地味なおばさんパンツは置いていなくて、光沢のある青い生地の小さなセミビキニ一枚しか置いて無かった。
まるで、娘みたいな若い人が穿くものだわ。
そう思ったが、それでも無いよりは良いと思って購入した。
その店の女主人らしい60位のおばさんからは、「これなら、可愛い奥さんに良く似合いますよ。
旦那さんも、気にきってくれますよ。」
と言ってくれたが、蓉子はこのおばさんが、私が夫から抱かれることを言ってるのだと思うと、ここでも顔から火が出るようだった。
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