熟年のご夫婦が上がってから、克司は蓉子を自分の側に引き寄せた。
蓉子は周囲のいやらしい視線が減ったのと、熟年の奥さんから優しく話し掛けられたことで、かなり落ち着いていた。
「素敵なご夫婦だったな。」
「そうね。
奥さん、優しそうな人だったわ。」
「お前にとっては、初の混浴はきつすぎたみたいだな。
大丈夫か?」
「ううん、約束通り、貴方が側にいてくれたから..」
「さっきのご主人に聞いた。
夜は泊まり客しか入れないそうだ。
夜、また入ろう。」
「はい、貴方。」
そんな二人の前を、築山の反対側にいたあの若いカップルが上がって行った。
やはり全く隠さずに、まるで海かプールから上がるような感じだ。
「もう上がるの?」
「だって、皆お前の身体見飽きたみたいだしな「えーっ、そんなことないよ。
何人もまだ私を見てるじゃない。」
「もう、上がろうぜ。」
「なんだ、混浴入らせるからって、私のヘアを剃っちゃったくせに。」
お湯に入っている克司と蓉子の位置からは、その若いカップルの身体をやや下から見上げるように捉えられたが、確かに女の子の下腹部には、成人にあるべき黒い茂みはなかった。
克司は蓉子が奴隷妻となってくれてから、妻の陰毛を剃ってしまいたい、と考えた事もあった。
自分の所有物として、ほかの普通の女性と違う姿にする。
それは魅力のある事だったが、目の前の若い女の子の剃毛された身体のイメージは、羞恥する妻の密やか隠微な姿を求める克司のものとは正反対だった。
克司にとって、剃毛された妻の姿とは、羞恥に顔を赤らめ、その部分を隠そうとするイメージだった。
克司がちらっと横の蓉子を見ると、蓉子も興味はあったのだろう、慎ましい正確なのにも関わらず、目が女の子の身体を追っていた。
蓉子も考えていた。
夫からあるべき黒い茂みを剃り落とされる。
それは、自分が夫の所有物である印。
きっと剃られる時の羞恥は、耐え難いものだろう。
それを耐えて、無垢な子供のような身体にしてもらう。
それは、夫と自分だけの、いやらしいが深い絆を形にしたもの。
他の人に知られることはない筈の秘密なのに。
蓉子は、もしかしたらあの女の子は、あのように無邪気に振る舞っているが、本当はそのような明るく騒がしい彼の好みに合わせてるだけなのかも、と考えた。
内心は自分と同じ。
愛する彼の為に、恥ずかしさを包み隠して、健気に振る舞ってるのでは..。
それほど彼への愛が強いのかもしれないわ..。
そう考えたら、蓉子はつい無意識に、横に居てくれる夫の腕に、両手で抱きついていた。
二人はお湯から上がって脱衣室に入った。
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