「あの...」
「何だい?やはり混浴は嫌かい?」
「いえ!貴方が入れって言うんでしたら、私は混浴温泉に入ります。
ただ..」
克司は言い澱む妻の心の中が、何となく分かった。
混浴温泉に入るのを躊躇う理由は2つ。
一つは、自分が既に熟年で身体も弛んで美しくないから恥ずかしい、との思い込み。
もう一つは、誰か変な男から襲われてしまったら..、と言う恐怖からだ。
「お前が慎ましい女で、他人に裸を晒したくないのは分かってる。
でも、俺は自慢の奴隷妻を他の男に見せびらかしたいんだ。」
「では、では貴方も、一緒に入ってくださるの?」
やはり恐かったんだろうな。
克司は、いたずらに妻を恐がらせた事を、少し反省した。
「俺も一緒に入る。
そうしないと、他の男がお前の裸を見て、どんな顔をして羨ましがるか分からないじゃないか。」
克司がそう言うと、蓉子は俯きながら、
「はい..、私、混浴温泉に入ります...」
と答えてくれた。
「よし!よく承知してくれたな。
明るい太陽の光の中を、小さなタオル一枚しか持たないお前の裸は、本当にきれいだろうな。」
克司がだめ押しの言葉を言うと、蓉子は両手で顔を隠して俯いた。
私、こんなに弛んだ醜い身体なのに..。
ご主人様はきれいって言っているけど、きっと温泉に入ってる人達は、何だ?この弛んだおばは?みっともないやつだ!と思うに違いないわ。
私はそれでも仕方ない。
醜いのは事実だし、そんな風に私に恥ずかしい思いをさせたいってご主人様が思ってるんだから。
でも、それでご主人様が恥をかく事にならないかしら?
ご主人様が他の人から、あの男は何を考えてるんだ?あんなブスを連れてきて!って思われたらどうしよう!
そんな風に惨めな想像をすると、蓉子は自然に涙ぐんでしまう。
その風情も、克司にとっては可愛くてたまらなかった。
数週間後の平日にたまっていた有給休暇を取り、克司は蓉子と隣県の有名な温泉地へと車で向かった。
大きな混浴露天風呂がある旅館に一泊予定だった。
蓉子は混浴の事が気になり、しきりにどんな様子なのかを夫に聞こうとする。
男の人も女の人も、いっぱい入ってるのかしら?
バスタオルとか水着は、やはりダメなの?
そんな質問を繰り返した後、
「お願い、貴方!
温泉に入ったら、私の側にいて!
私を一人にしないで!」
と夫の腕にすがるようにして言った。
旅館は老舗であり、フロントの品の良い従業員が対応してくれたが、夫のかげに隠れるように付き添う蓉子には、周囲の皆が、
「この女、ここに泊まっていやらしい事を楽しむつもりなんだろう」
と心の中で言ってるような気がしてならなかった。
部屋に案内されて直ぐ、克司は洋服を脱いで浴衣に着替えた。
夫に促されて、蓉子も浴衣に着替えたが、夫は浴衣の下はショーツだけしか許してくれなかった。
ブラもカップ付きキャミソールも身に付けずに、蓉子は浴衣の下は、ただ一枚のベージュの大判ショーツだけ。
胸元をしっかりと合わせても、少し動くと、Dカップでとりわけ大きい訳ではないが、年齢の割には形の良い乳房が露呈した。
さすがに克司も、蓉子に半纏を着ることを許したが、そうでなければ、混浴温泉に入る前に、廊下で蓉子の硬くなった乳首を他人に見せることになっただろう。
蓉子にとって、今部屋の中で正座してお茶を飲むんでいるのは、これから行われる混浴温泉での恥ずかしい裸体晒しを待つ落ち着かない時間だった。
「さて、行くか!」
克司が立ち上がった。
蓉子は、ふらふらと立ち上がり、小さなタオル一枚だけを手にして、夫の後を混浴露天温泉へととぼとぼと歩いていった。
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