寿子と京子 7
6時少し前 部屋の電話が鳴った。
『はい、お願いします』と、叔母さんが答えた。
『予定どおり6時でいいか?』って中居さん。
『しっかし好きねぇ、2人とも』
『ずっと勃ちっぱなしなんじゃないの?健ちゃん、そんなに咥えさせてばかりいて ふやけちゃったりしないの?、痛くなったりとかしないモンの?勃ちっばなしで』
と、叔母さんが あきれ顔で聞いている
俺
「だってほら もう そんなにビンビンって訳でもないし」
「だいち 豊川さんかま離さないしさ、ね?豊川さん?、離したくないんでしょ?」
京子
『ほんにゃ、ケンひゃんが‥』
俺
「俺は何も言ってないでしょ?」
「ただ 前に立っただけでしょ?豊川さんの」
「浴衣の裾 はだけたの誰だっけ?」
寿子
『私は好きだな、その お口中で だんだん大きくなってくの』
『でも、大っきくならないんじゃ要らない』
俺
「何でも良いんだよねチンチンなら、ね?」
「その内、孫のとか しゃぶり出したりして」
寿子
『え?、あんなラッキョみたいなやつ?』
俺
「何 その ラッキョって」
寿子
『ケンちゃんだって そうだったわよ、子供の頃は、それが今では‥、フフフ』
〔ピンポーン〕
『ほら京子ちゃん、ご飯よ、その位にしなさい』
迎えに出た叔母さんのあとから『失礼しまぁす』と、寺崎さんがワゴンを押しながら入ってきて 手際良く料理をならべてくれた。
寺崎
『おビールで宜しいんでしょうか?』
『お注ぎ致します』
それぞれにビールを注ぎ 俺の所でポチ袋を返しながら言った
『林様、こんなには頂けません、お気持ちだけ頂戴させて頂きます』
俺
『そんな‥、受け取って下さい』
寺崎
『いえ、これは多過ぎます』
『失礼ですが、その‥、お間違えでは?』
俺
『いえ、間違えてませんよ』
『変に誤解を招くかな?とも思ったんです、その 大変失礼な言い方ですが お金で寺崎さんを買うみたいな そんな風に思われてもイヤだなとは思ったんですけど そんなつもりは毛頭ありません お金でどうこう とか そんな事は』
『ですから遠慮なさらずに受け取って下さい』
寺崎
『そうですか?、では遠慮なく‥』
『今夜は精一杯務めさせて頂きますね』
俺
『はい、お願いします』
寿子
『でも アレね、失礼な言い方だけど、コンパニオンみたいな事もなさるのね?』
寺崎
『はい』
『閑散期の平日だけ、それもご夫婦とかカップルのお客様に限ってですが』
寿子
『男連中だけじゃ 危なっかしいもんね?』
寺崎
『バブル崩壊後にオーナーが あの手この手で考えたみたいです、マッサージも売り込んで来いとか 色々と』
『男性のお客様だけのときは 支配人と一緒なんて事も御座いましたが 今はそれも‥、皆さんお酔いになられると、その‥、支配人なんてお構いなしに‥、と言う事も有ったみたいです、ハイ』
寿子
『ま ウチは素面でも 女連れでも こうですけどね、良かったわ お断りされなくて』
『寺崎さんも結構好きだったりして、フフ』
寺崎
『イジメないで下さい、お返事に困ります』
『ところで 如何でしたか? 当宿のお風呂は、混浴は行かれたんですか?』
寿子
『混浴には行きましたよ、混浴でイったのは この人だけですけど』
『て言うか 逝っぱなしで何処で何回イったか覚えてないでしょ京子ちゃん』
寺崎
『まぁ羨ましい』
『良かったですね 京子さん?』
『皆さん お若くていらっしゃるから 羨ましいかぎりです』
寿子
『寺崎さんだって まだまだ‥、でしょ?』
寺崎
『ワタクシの場合は お相手が居りませんので』
寿子
『え?、そうなんですか?』
寺崎
『はい、2つ目のバツがついてからは トンとご無沙汰でございます』
寿子
『あら 勿体ない、蜘蛛の巣が張りますよ』
寺崎
『それは何とか回避しております』
寿子
『回避って』
『面白い、寺崎さん』
『ねぇ健ちゃん、全然イケるでしょ?』
俺
『全然、全然』
寺崎
『勿体ない、もう おばぁちゃんですから』
俺
「ホントですって」
寺崎
『ありがとうございます』
『お世辞でも嬉しいです』
『おビール、どうなさいますか?』
寿子
『お願い出来る?』
寺崎
『かしこまりました』
『では お済みの物 下げさせて頂いて おつまみ見繕ってまいりますので 暫しお待ち下さい』
『戻りましたら お布団敷かせて頂きます』
『それでは 少々お待ち下さいませ』
『ねぇ健ちゃん、いったい幾らつつんだの?』
『こんなに頂けないなんて寺崎さん、そんなに包んだの?』
寺崎さんが出てゆくと すぐに叔母さんにきかれた。
俺
『そんな事ないよ』
『寺崎さんなりの礼儀ってヤツでしょ?』
『恐縮する程 包んでないから』
寿子
『そう なら良いけど』
『それより京子ちゃん?、どうしたの?、さっきから めっきり口数が減っちゃったけど』
京子
『ん?、そんな事ないわよ』
寿子
『イき疲れちゃったの?もしかして』
京子
『ち、違うわよ、ただの湯あたりよ』
『いいでしょ、もぉぉ!』
寿子
『‥にしては 帰ってきて すぐに咥えてたじゃない?、まぁ良いけどさフフ』
『失礼しまぁす』
チャイムの後に寺崎さんが戻って来た
『おツマミは適当に見繕って貰いました』
『では失礼して お布団敷かせて頂きますね』
『バサバサさせない様 気を付けますから』
『ありがとうございます』
『ところで寺崎さん、失礼ですが 何時までですか?お仕事は』
俺は布団を敷いてくれている寺崎さんに尋ねた。
寺崎
『はい、今日はこれで終わりです、あとは日報かいて‥』
『お済みになったお皿などは ワゴンごと廊下にお出し下さい、係の者がまいりますので』
『あの、よかったら お寄りになりません?』
『まだ9時前ですし、その 失礼ですけど お帰りになっても お1人なのかと‥』
俺の意図を察した叔母さんが そう寺崎さんを誘っている。
寺崎
『ありがとうございます』
『有難いお話しなのですが 支配人が‥』
『当館の決まりもこまざいまして』
寿子
『そこは 何となく分かるけど‥』
『ダメ?、どうしても?』
寺崎
『8部屋45人の小さな旅館です、変な噂がたったりしたら協会からも組合からも すぐに干されてしまいます、お許しください』
寿子
『変な噂?』
寺崎
『以前 他所であったのですが、あそこは中居とデキるって、噂が本当かどうかなんて そんな事はお構いなしに‥、ですので‥』
寿子
『なら こうしましょ、旧友と暫くぶりに再会した、仕事終わりに少し話しをしたい。そう私が支配人にお願いするわ、それでもダメなら諦めましょ?、ね?良いでしょ?』
寺崎
『そうですか‥』
『でしたら 近藤清美と言って下さい』
俺
「なにその コンドウ キヨミ って」
寺崎
『2人目の主人の名字です』
『務めだした頃は まだ離婚前で‥、で そのままの名前で‥、明細やなんかは近藤になってますけど、そういった事以外は寺崎で‥』
『旧姓を知ってる女性なら 支配人も許してくれるかもしれません、今度 いつ会えるか分からないしとか そんな風に言って下されば‥』
寿子
『よし!、それでいきましょ!』
『近藤清美ね?、わかったわ』
寺崎
『清くも美しくも無いですけど』
寿子
『健ちゃん?、ツッこむ所よ 今の!』
『‥分かった、電話する、フロントで良いの?』
清美
『はい、お願いします』
支配人宛にフロントに電話を掛けた叔母さんが 話し始めて暫くすると 皆んなに親指を立てて ウインクしてみせた。
『じゃぁ 私も支配人にお礼を言って すぐに着替えて来ます』
近藤清美さんも そう言って 軽やかに 部屋を立て行った。
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