2年ぶりに家に戻った私を子供は無論のこと、夫も暖かく迎えてくれました。夫は「罰ゲーム」として大和田という男に私を寝取らせた結果、
こんな事件に巻き込まれたことを悔いていました。けれども、警察には本当のことを話さず、ただ外出中に行方不明になったとだけ届けていたのです。
世間体のためなのか、そのうちに私が帰ってくるだろうと高をくくっていたのか、いずれにしても警察に真実を話すタイミングを失っていたのでした。
私も無人島の地下室で子供を孕まされ、産まされていたなどとは口が裂けても言えませんでした。それで、何かのショックで記憶喪失に陥ってしまった
ふりを続けたのでした。数か月たって元の暮らしに戻ったころ、私は地元の新聞社の過去の記事を調べてみました。その結果、地元ではありませんが、
遠く離れた他県で、暴力団の捜査中に組員に家族を殺害された刑事の記事が出ていました。刑事はその後職務中に犯人に復讐し、行方不明になっていました。
刑事の名は木本剛(47歳)と書いてありました。あそらく私を拉致し監禁したのはこの男でしょう。しかし、手掛かりはそれ以上なく、今更警察に真実を
話す勇気も持てず、お墓の中に持っていく秘密にするしかないと考えています。男は私の妊娠がわかったあと、胎教に良いと言ってクラシック音楽をCDで
私によく聞かせました。子供が生まれた後は、クラシック音楽の子守歌のCDを繰り返し地下室で流していました。そのせいで、今でもテレビでその音楽が
流れると地下室の蛍光灯の灯りの下で、私の乳首を吸っていた赤ちゃんの顔がフラッシュバックするのでした。
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