病院を退院してから数か月が過ぎた日、モナカはヒロキの部屋を訪ねた。
モナカが出産してから、ヒロキは殆どモナカと顔を合わせていなかった。
あまり外出せず、家に籠る事が多くなっていた。
モナカはヒロキの部屋に入ると、
「今日は、子どもを実家に預けてきましたの。」
と言って、ヒロキに抱き着いた。
そしてヒロキの顔を見ながら、
「あなたがわたしに種付けしていた事は、知って居ます。」
と言った。
ヒロキは驚いた顔でモナカを見ながら、
「そうですか。」
と言うと、いきなりモナカを押し倒した。
そして、
「モナカさん、旦那さんと別れて、俺と一緒になって下さい。」
と言った。
モナカが、
「そうなるように、わたしに種付けしていたのですね。」
と言うと、ヒロキが大きく頷いた。
「もし、生まれた子どもが夫の子どもで無かったから、わたしたちは別れていたと思います。
そうなっていたら、わたしはヒロキさんの思いを受け入れ、一緒になっていました。
でも、生まれた子は、夫の子どもです。
だから、ヒロキさんの思いを受け入れる事はできません。」
とモナカがハッキリと言った。
その一言で、ヒロキの気持ちは吹っ切れた。
「最後に、モナカさんを抱かせて下さい。」
とヒロキが言うと、
「ええ、わたしもそのつもりで来ました。」
と嬉しそうに言って、モナカはギュッとヒロキに抱き着いた。
そして2人は、お互いの体を求めあった。
それから更に数か月が過ぎ、モナカとタノカワは、モナカの実家の近くに、引っ越すことになった。
引っ越しの当日、モナカとタノカワがヒロキに挨拶をした。
「ヒロキくん、いろいろと世話になったね、ありがとう。」
とタノカワが笑顔で言った。
「いいえ、こちらこそお世話になりました。」
とヒロキも笑顔で言った。
「それじゃヒロキさん、お元気で。
早く良い人を見つけて、子どもを作って下さいね。」
とモナカは笑顔でいうと、大きくなったお腹を摩った。
ヒロキは、
「モナカさんも、元気な子どもを産んで下さい。」
と言うと、モナカのお腹を優しく触った。
「ありがとう、ヒロキさん。」
モナカは赤い顔をして、とても嬉しそうに言った。
お腹の子どもが、ヒロキの子どもであるか、タノカワの子どもであるか、モナカには判らなかった。
ただ、ヒロキの子どもであって欲しいと、モナカは心の中で強く願っていた。
荷物を積み込んだ軽トラックにモナカを乗せると、タノカワはゆっくりと車を走らせた。
ヒロキは、その車をしばらく見送った。
モナカが引っ越して1か月が過ぎたある日、モナカとタノカワが住んでいた部屋に女が一人で引っ越して来た。
女は30代半ばで、落ち着いた雰囲気があり、少し緩い体形をしていた。
クリっとした目と、可愛い顔立ちが、どことなくモナカに似ていた。
女は、とても薄くピンク色の下着が透けて見えている白いブラウスと、フワフワと揺れている青いフレアの
ミニスカートを履いていた。
「こんにちは。
今日、引っ越してきました、バニラと言います。」
と女はヒロキに挨拶をした。
「どうも、ヒロキです。」
と挨拶をすると、ヒロキは、とてもイヤらしい目でバニラを見た。
バニラは、そのヒロキのイヤらしい目に気付くと、
「どうぞよろしく。」
と妖しい目でヒロキを見ながら、とても嬉しそうに言った。
おわり
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