妻はその夜、セックスのあと自分の子供の時の話しをした。
妻の家は父親が商売に失敗して多額の借金を抱えていた。街金にも借りて、家には再々借金取りが押し掛けた。
妻が小学生だった頃、学校から帰ると家の中から母親の喘ぎ声が聞こえた。そっと家の裏に回り窓から中を覗くと、
借金取りの若い男が母親を犯している最中だった。男の背中には彫りかけの竜の入れ墨がしてあった。
男が帰ったあと、母のもとに行くと、
「お父ちゃんには口が裂けても言うんじゃないよ。これは大人の話だからね、いいかい、約束だよ。」
と固く口留めされた。世間では夫の借金で離婚する夫婦も多いが、母親はずっと苦労を辛抱して夫を支え続けた。
妻は両親を助けるため看護師になり、借金返済を手伝った。
「わたしは絶対にあなたとは別れない。あなたが浮気しないかぎりはね。」
夫の浮気は許さないという理不尽な宣言も、その時の俺には甘い愛の囁きに聞こえていたのだった。
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