妻はこうして「先生」の家にお泊りに出掛けた。俺は妻が家から出かけた途端に後悔していた。
まる1日以上、一人の男だけと妻が時間を過ごすのは結婚して初めてのことだった。テレビでドラマを見ても内容が入ってこないし、
エンタメは寂しさをかえって駆り立てるだけだった。一人で酎ハイを飲んでいたが、たまらず10時頃妻のスマホに電話をしてしまった。
だが電話に出たのは「先生」で、妻は入浴中とのことだった。
「出てきたら電話をかけるように伝えましょうか?」
と「先生」が言うので、いや、結構です、と俺は断った。小さな男の意地だった。妻からはその後、電話はなかった。
夜の12時、俺はとうとう耐えかねて、タクシーを呼んで「先生」の家の前まで出かけてしまった。
郊外の2階建ての家だった。1階には部屋の灯りはなく、2階の部屋だけがカーテンから部屋の灯りが漏れていた。
誰もいない深夜の通りに、俺は一人で立っていた。
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