クリニックから家に帰ると、俺は「先生」が精子提供者になってくれる話をした。妻は少し不安そうに
「あなたは、それでもかまわないの?」
と聞くので、
「俺はいいんじゃないかと思う。これも何かの縁かもしれないし。」
「そう、私はいいけど。あの先生は誠実そうな人だし。」
誠実?それはどうかな、と思いながらも
「ただ、一つ条件があってね。セックスで提供したい、て言うんだ。ここが問題だが・・・」
「そう。先生は確か離婚してひとりだったわね。いいわ、セックスでも。」
「そ、そうなんだ。あっ、かまわないんだ。・・・それで俺が先生に条件を出した。俺が見ている所でしてくれ、て。」
途端に妻の表情が変わった。
「え~、だめだよ。あなたの前なんかで、あたしできないよ。むり、むり。絶対ムリ。」
「どうして?」
俺は秘密クラブで仮面を付けた妻が、黒人や複数の男とセックスするのを妻に気づかれぬように見ていた。
「どうしてって、恥ずかしいよ。う~ん、やっぱりムリ。気になってできないから。」
俺の前の妻と、秘密クラブの場での妻は別人格なのかと、不思議な感覚を俺はその時感じていた。
「わかったよ。俺は君に任せるから、いいようにして。」
「本当?本当にわたしのいいようにして、かまわないの?」
「ああ、任せるよ。」
俺は妻の目の奥で何かがキラキラと光ったような気がした。
妻はその後クリニックの「先生」に電話を掛けていた。話し終わった後、妻が俺に言ったことばに驚いた。
「先生とお食事に行く事にしたの。まずはコミュニケーションね。色々先生に聞きたい事もあるし。」
「えっ? 診察室じゃなくて?」
「診察室じゃ話せないこともあるわ。ねえ、いいでしょ。わたしに任せる、て、言ったでしょ。」
俺は妻の様子に不安を感じながらも、しぶしぶ承諾するしかなかった。
土曜の夕方、妻はおしゃれをして「先生」とのお食事のデートに出かけて行った。食事だけなら1時間か2時間くらいの
間かなと思い、俺は一人でテレビを見て時間をつぶしていた。
3時間経った。俺は心配になってきた。それで電話した。妻が出た。
「お食事のあと、スナックに入ったの。心配しないでね。色々聞きたいこともあるからね。」
妻はすぐに電話を切ってしまった。
さらに時間が経ち、夜の10時になっていた。俺は再び電話したが電源を切ったのか繋がらなかった。
いよいよ不安になった俺は、「先生」のクリニックに行ってみたが中は真っ暗で人気は無い様子だった。
大城のラブホも気になったが、玄関で、俺の妻は来ていませんか、とスタッフに聞くわけにもいかなかった。
結局、妻は夜中の1時過ぎに、グデングデンに酔っぱらって帰ってきた。
「ごめんなさい。スナックはしごして、よっぱらちゃった。先生も飲み歩くの久ぶりだったみたい。
いやあ、飲みすぎたわ。」
俺「電話したけど、電源切ってただろ。なぜなんだ?」
妻「そんなことしてないよ。」
そう言いながらバッグからスマホを取り出した。
妻「あれっ?電池がなくなってる。充電してたんだけどなあ。ほら、見てよ、電池が切れてたの。」
俺が確かめると確かに電池切れの状態だった。
「眠たいの。あたし寝るね。」
妻はそういって寝室のベッドに倒れ込み、洋服を着たまま眠ってしまった。
俺は妻に聞きたいことも聞けず、しかたなく寝ることにした。その前に充電器に妻のスマホを繋いでおいた。
5分ほどして、充電が少し回復したスマホにメールが入って来た。きっと「先生」からのメールだと思った。
研修医との一件以来、妻のスマホのセキュリティ番号は知っていたので、スマホの中を覗いてみた。
案の定「先生」からだった。
「今夜は楽しかったよ。ご主人公認なのだから、また遊びましょう。君のスマホで動画撮影したけど、うまく撮れてたかな?
途中で電池が切れたみたいだった。じゃあ、またね。おやすみ。」
これで充電済みのスマホの電池がすぐに無くなった理由がわかった。早速スマホ内の動画を見てみた。
「先生」の顔が出て来た。ベッド脇の何かの影にスマホを撮影状態にして隠そうとしていた。「先生」はバスローブを着ていた。
どうやら場所は「先生」の自宅らしい。設置が終わるとベッドに腰かけた。そこへバスタオル姿の妻が現れた。
妻はシャワーの後らしかった。
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