ショートメールを入れると直ぐに返事があった、今度はスマホにショートメールだった。
(それでは、早速ランチでもどうですか?今、偶然あなたの会社の近所に居るんですよ)
今日は外食する予定だったので私には断る理由も見当たらず、承諾してしまう。
冷静に考えれば、完全に会社を特定しているという事なのです。
ただ、お詫びと言うのならこんな事しないと思ったはず・・・、私は冷静さを失っていたんです。
正直、顔も見ていなかったんです、こちらは全て把握されているって・・・。
しかし、私は違う期待に舞い上がっていた、行き詰まっている小説の取材をするチャンスだと思っていた。
リアルな痴漢の取材が出来るんです、本来なら警察に突き出すべきだったんです。
電車の中と私のガードは変わっていなかったのです。
主人しか男を知らない私は、軽い冒険みたいに考えていたのでした。
浮気じゃない、ただの取材だと・・・。
そうして、お昼になり約束したファミレスを訪れた・・・。
メールに店と座っている場所が送信されて来た、店は会社の直ぐそばだった。
店に入るとちょっと予想と違うイメージの男性が一番奥のボックス席に座っていた。
昨今のファミレスは、コロナ対策で店員との接触は最小限、しかもソーシャルディスタンス
で、客同士も間隔を空けていた。
しかも、一番奥はカメラの死角になる場所となっていたのだった。
そんな事も判らない私は無防備にボックス席に向かう、彼も気が付いたようだ。
全く緊張感の感じられ無いその男は、私と隣り合って座る様に招き寄せる。
ロングシートな為、密着する事は無かったが私は驚く。
人に謝る感覚を受けなかったのだ。
暫くの間沈黙が続く・・・、注文も今はタッチパネル・・・二人の空間に近付く
者はいなかった・・・。
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