「あそこ・・・あの柱よ、わかった?」
里美は真季の指がさす、高速道路の大きなコンクリートの柱を見つめながら頷いた。
パーキングエリアから少し離れた、たった一車線の側道には、人も車も通ってはいなかった。
「隠れてて・・・出てきちゃダメよ?」
後部座席の少女は、その幼い顔に興奮を浮かべながら頷いた。
それを見てクスッと笑い、真希は運転席から降りていった。
後部座席に浅く座り、助手席のシートに身を隠しながら里美は見ていた。
真希は、まるで何度もそうした事があるような慣れた足取りで大きなフェンスの大きな裂け目をくぐった。
生い茂る背の高い雑草の間・・・獣道のような割れ目を進んでいく。
そして大きなコンクリートの柱の前まで行くと、体を柱に預けて立った。
数分後、今度は里美の乗る車とは反対側の雑草の割れ目から 男が現れた。
のそのそと歩き、男は真季に近づいていった。
その顔は髭に覆われていた。
青いシャツが汚れて黒く霞んでいた。
作業服のズボンは、膝が破れていた。
不潔だ・・・里美はそう思いながら、近づいてくる男に笑顔を向ける真季を見ていた。
(・・・・・・真希さん・・・まさか、今から・・・あんな男と・・・)
心臓がドクンッと跳ねた。
顔が熱くなっていくのを感じながら、里美はじっと見つめていた。
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