時は少し戻ります。
私は葬儀も終わり、弔問客も居なくなり祭壇も片付けられたホールで夫の肖像画を見ています。
私の肖像画と並んで飾られています。
ほがらかに笑みをたたえた肖像は、やはり遠くへ旅立った夫を思い出してしまいます。
私は夫に大事にされて、しかも全てを管理されていた事に今更ながら動揺していました。
この先どうやって生きていけば良いのか・・・。
けれど、もう夫以外を愛せない・・・、全てを投げ出して私一人を愛してくれた事に、私は報いなければ
ならないと考えていたからです。
女一人が生きて行けるだけの資産はあります、私はこの場所を守る決心をしました。
使用人も最小限にし、夫との思い出の中で生きて行こうと思いました。
そんな事を考えながら誰も居ないホールでソファーに座っていました。
ふと、人の気配を感じます。
使用人男) 奥様・・・大丈夫ですか?、軽い食事を用意しております。
少しでもお口になさって下さい。
奥様が体調をお崩しになっては、私が旦那様に叱られます。
今日はお疲れでしょう、お食事されておやすみになって下さい。
それと・・・少しお話があります、お屋敷も旦那様がお亡くなりになり、奥様もお若い・・・
皆、奥様はお屋敷をお出になるんじゃないかと思っております。
若い者は他でもやって行けるでしょうが、古参の私達は難しいと思います・・・。
お屋敷を維持するには最低でも3人は必要です。
こちらのお屋敷には地下施設がある事も、私は判っています。
私とメイドと施設管理者は、このままお使えしとうございます。
さなえ) ああ、ありがとう・・・、あなたの言う通りです。
私もこの屋敷を守って行きたいと思っています。
あなたとメイドさん、施設管理者の方はそのままお願いしたいと思います。
私に仕えて下さいますね・・・。
使用人男) 奥様・・・ありがとうございます・・・それでは今まで通り私達3人はお仕えできるのですね。
若い者は私が責任を持ってあたります。
それをお聞きして安心しました、メイド長も施設管理の者も安堵する事でしょう。
さあ、奥様お食事を食べて下さい・・・。
私はこの人達を誤解していたと思いました、ずっと私を嘲笑していると思っていたのにこの屋敷を
守ってくれると言ってくれているのです。
ただ・・・地下施設の存在を知っている・・・。
その言葉に少し戸惑いますが、女一人でここは守れない・・・。
私はこの男の申し入れを受け入れるしかないのでした。
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