使用人男A) 奥様!・・・奥様、そろそろ葬儀の準備になります。
鍵を開けてください、それにお食事も少しはお食べになって下さい・・・奥様!
私は監視室のモニタからの音に気がついた。
主人への奉仕と、泣きながら眠ってしまった様だった・・・。
外界の様子が判らないこの部屋は念の為に書斎入口のドアには外部の様子をモニタし
物音などがした場合、知らせてくれる機能がある、例えば火災の時への対応の為だった。
もちろん、直接外部に避難するルートも用意してあったのだ。
私は正気に戻って監視室からモニタに・・・
さなえ) ええ・・・判ったわ・・・暫く待って頂戴、そうねあと十分待って頂戴
ここから話すと書斎のスピーカーから部屋の中から話している様に聞こえるのだ。
私は主人の体裁を整え、自分自身も喪服を着付けて書斎のドアを出る。
これからは夫を送り出さなければいけなかったのだ。
もう暫く泣いてなんかいられない・・・。
私は夫の亡骸の体裁を確認して書斎の鍵を開けた。
使用人男A) 奥様、少しはお眠りできましたか?もうすぐ弔問客も来られます、旦那様の亡骸は
私達で祭壇にお戻しします、シャワーでもお浴びになって軽くお食事をして下さい。
私は言われるままに自室に戻り、熱いシャワーを浴びた・・・。
夫と地下世界に行くまでの間、表向きの生活を営んでいた部屋・・・。
また、最初の初夜から女の悦びを刻まれた部屋・・・。
今でも優しい夫がドアを開いて入ってくる・・・そんな気持ちが湧き上がる。
今までならこれから朝の散策をして、食事を摂る・・・。
そんな日常を・・・。
もう、そんな事出来ない事を、脱ぎ去った喪服で思い知らされる・・・。
姿見に映る私の肢体・・・、29歳の私の身体・・・、もう誰も愛せない・・・。
歳の差があって、いつかはこんな事になる事は判っていた。
こんなにすぐに訪れるとは予想もしていなかった。
ましてや、夫の肉体は鍛えられとても62歳の身体では無かったから・・・。
女盛りをこれから迎える私は一人にされてしまったのだ。
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