昼休みに、何度か同僚のパソコンを除いた。
もちろん誰もが あのメールアドレスを迷惑メールに指定していた。
あの日の画像は、ウィルスではなかった。
次の画像も、ウィルスではないかもしれない。
・・・だが、そんなリスクをわざわざ犯す男など、1人もいなかった。
その姿を あろう事か自分の女上司に重ねる浜崎のようなダメ社員しか、わざわざ開いたり・・・それどころか、次の着信を待ち望んだり するはずがなかった。
ある日、浜崎は 夜のオフィスに戻った。
ほとんど家に着きかけていた場所で、携帯をデスクの中に忘れた事に気づいたのだ。
額から汗を垂らし、鼻息を荒くしながら、いつもの3倍ほどの速さで歩いたが、会社に着いたのは20時を回っていた。
玄関の扉に、警備は掛かっていなかった。
エレベーターを待つ時間すら イライラとした。
そして自分のデスクから携帯を取り出し、ようやく安堵の息をつくと、携帯の画面ロックを解除しながら フラフラと・・・いつもの倍ほど遅いスピードで エレベーターに向かった。
エレベーターの扉には、さっき自分が下りたままの 3階を示す数字が表示されていた。
浜崎は太い指をエレベーターのボタンに伸ばして、ふっと動きを止めた。
(・・・・・あれ?)
鈍い頭をフル回転させて、その違和感の原因を考えた。
(・・・・さっき・・・エレベーターを待った・・・・)
大きな体で のそっと振り返り、自分が今 出てきたばかりのオフィスを見た。
全ての電気が消え、慣れていなければ歩けないほど 真っ暗だった。
(こんな時間なのに・・・誰もいないはずなのに・・・警備は掛かっていなかった・・・)
そして静かに、エレベーターに向き直る。
視線は、階数を表示するプレートを見ていた。
(さっき・・・エレベーターは・・・8階を・・・・)
浜崎の指が『▽』ではなく『△』を押す。
エレベーターの扉の開く音が、やけに大きく感じた。
そしてエレベーターに乗り込むと、『8』のボタンを押した。
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