永川「………いたっ!」
私は隣に眠る次男の春夫から、顔面にパンチを受けて起こされてしまった。
永川「っーーー。このぉ。」
私はパンチをされた鼻を押さえながら、次男に軽くパンチを返す。
もちろん次男は気付くはずもなかった。
私は意識を取り戻したことで、急な尿意をもよおし、ベッドから起き上がる。
部屋のドアを開けると、コテージの中は真っ暗だった。
永川『皆無事に寝たのかな。』
私は、皆を起こしたらまずいと思ったので、なるべく足音を立てないようにして一階へと降りた。
永川「あれ?」
皆大分お酒を飲んでいたから、リビングに誰か寝ちゃう人が一人くらいいるのかと思っていたら、誰もいなかった。
永川「皆すごいなぁ。」
私は、そう独り言を言いながらトイレに向かった。
パチン、カチャ
人気のなくなったいコテージでは、トイレの電気をつけるボタンを押す音とドアを開ける音がやたらと大きく聞こえた。
トイレに入り、私はパジャマとして着ている紺色のルームウェアのズボンと一緒にショーツを降ろしてウォシュレット付きの便座に座る。
………シュルルル……シュュューーー
久々にお酒を多く飲んだせいか、おしっこの出る量がいつもより多かった。
永川「飲みすぎたぁ。」
私は右手で頭を押さえ、そう言いながら、おしっこを全部出しきると、便座横のビデのボタンを押す。
ウィィィン………シャアァァァァァ
カラカラカラカラ
ウォシュレットでおしっこを出した部分を洗い、トイレットペーパーで拭き取る。
ジャアァァァァァ
私はトイレを流した後に、ズボンを履き直してリビングに戻った。
暗いのに目が慣れたので、私はリビングでコップ一杯の水を飲んだ。
永川「雪ちゃん、ちゃんと戻れたかなぁ。」
私は友人の小坂雪さんが、きちんとコテージに戻っているのか、ふと、心配になった。
机の上はゴミが片付けられていて、綺麗になっていた。
永川「え……と。」
机の上を見渡してみたけれど、もう一棟のコテージの鍵は見当たらなかった。
永川「あ、そか。雪ちゃんが持っててるんだよね。よく考えればすぐ分かるじゃん。」
コテージの玄関で靴を履いて、隣のコテージに向かう。
永川「随分真っ暗だねぇ。」
私は恐怖心を振り払うようにしてそう呟きながら、私達が泊まる予定だった隣のコテージの前に着いた。
永川「雪ちゃん起こさないように気を付けなきゃね。」
そーっと、玄関の扉を開けて、コテージの中に入り靴を脱ごうとしたところ、私は玄関に二つの靴が置かれていることに気付いた。
永川『え…………これ……』
暗い中で置かれた小坂さんのものではない大きい方の靴を手に取り、よく観察すると、その靴が山口君のものだと分かった。
永川『ちょっ………と。え?』
私は、もしかしたら、このコテージに招かれざる客、なのかもしれないということがすぐに頭をよぎった。
今すぐコテージから出て、子供達が眠る元居た部屋に戻りなさい、と心の声がそう言っているにも関わらず、私は怖いもの見たさ、そして知りたい願望に勝てず、山口君の靴を置いて、ゆっくり足音を立てないようにして廊下に上がった。
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