車が駅前に到着する。
小坂「ありがとー。」
山口「ここでいいの?家まで送るよ?」
小坂「ん?いいの、いいの。主人が駅前まで迎えに来てくれる約束だから。」
山口「そっか。分かった。」
小坂「永川のことは、本当に気にしないでね。私が何とかするから。」
山口「うん。」
小坂「じゃあ、またお店で。」
山口「はい。よろしくお願いします。」
小坂さんは、車から降車し、駅の反対口へ向かった。
私は、彼女の後ろ姿を見送り、店に顔を出す前に一旦自宅へと戻ることにした。
自宅に到着し、玄関の鍵を開けると、逆にドアがロックされてしまった。
おや?と思いつつ、もう一度玄関のドアの鍵を開けて中に入ると、玄関に中尾の靴が置かれていた。
『あ、中尾来てるんだ。』
そう思いつつ、私がリビングに行くと中尾はデスクトップパソコンに向かっていた。
山口「ただいま。」
中尾「ん。おかえり。」
山口「どしたの?」
中尾「ん?荷物取りに来がてら、ちょっとデータ整理してる。」
山口「そっか。」
リビングに暫くの沈黙が流れる。
山口「なぁ。」
中尾「ん?」
山口「そろそろ帰ってこないの?」
中尾「…………。」
山口「俺、どうしたらいいんだろ……。」
中尾は黙ったままだった。
また暫くの沈黙の時間が流れる。
中尾「よし、オッケー。じゃあ、私、帰るね。」
山口「………そっか。分かった。」
中尾「もう少し、時間…ちょうだいよ。」
山口「………うん。」
中尾「じゃあ、また。」
中尾はそう言い残して、部屋を出て行く。
中尾が出ていった後、誰もいなくなったリビングで私は暫く考え事をしていた。
頭に浮かぶのは、中尾が出ていってから、昨晩までの小坂さんとの出来事だった。
山口「………、ホントにどうすりゃいいんだか分からないなぁ。」
そう独り言を言って、私はスーツに着替えて出掛ける準備を始めた。
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