山口「お、あった、あった。」
私はクローゼットの本棚から一冊のアルバムを出した。
アルバムを出してリビングに行くと、丁度中尾が帰宅してきたところだった。
中尾「あれ?まだ寝てなかったんだ。」
山口「あ、お帰り。うん、ちょっと昔を懐かしもうと思ってさ。」
中尾「あぁ、高校時代のアルバムかぁ。うちらの世代はまだギリギリインスタントカメラ持ち歩く時代だったからねぇ。」
山口「そうそう。無駄に沢山撮ってた記憶あるよなぁ。」
そう言いながら私はアルバムのページをめくり始めた。
入学式の頃から始まる写真。
まだ中学生のあどけなさを残しつつ、お互いのことをほとんど知らない顔同士が初めて顔を合わせたころ。
そして、入学式から2週間くらいして行った、オリエンテーリング合宿の頃から次第にグループ形成がされていく過程。
ゴールデンウィークを過ぎた辺りでは、もう遊ぶ相手はほとんど固定化されていた。
中尾「ルーズソックスなつい(笑)」
あの頃の女子は、よくルーズソックスを履いてたのを思い出す。
山口「確かに(笑)今ほとんど見かけないよなー。」
中尾「あれは暑すぎるんだよねぇ。でも、懐かしいメンバーだね。」
山口「そうだねぇ。」
私、中尾、山川さん、吉川、それに男友達の児山に赤石、女友達の永川の7人でよく遊びにいったりしていた思い出が次々に脳裏に蘇ってくる。
定期テストが終わると必ず全員でカラオケに行ってストレスを発散したり、休みの日にはアミューズメントパークに行ったり、買い物に出掛けたりしていた。
山口「確か、やまさんは、高校入学したころは、彼氏がいたけど、入学してすぐに別れたんだよなぁ。」
中尾「確かそうだったね。」
山口「んで、秋くらいから吉川と付き合ってたんだよね。」
中尾「うん。」
あの頃は、何の考えもなしに撮ってた写真も、今こうして当時を思い出すことが出来ていることを考えると、無駄ではなかったと思える。
山口「あの頃のメンバーで一回集まりたいなぁ。」
中尾「それは流石に難しいんじゃない?連絡取ることは出来ても、時間がないじゃん。」
山口「だよなぁ。」
中尾にそう答えたものの、今はこうして別々の人生を歩んでいるが、友達であることに変わりはない。
いつかきっとまた皆で笑いながら高校時代を懐かしむ日が来るのを期待しながら、私は、アルバムを閉じたのであった。
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