翌週の火曜日。
今日は小坂さんが出勤してくる日だった。
あんなことをしてしまったせいか、未だに小坂さんと顔を合わせることに緊張している自分がいた。
いくら、お酒で意識がなかった状態とはいえ、小坂さんは間違いなく女の反応を示していたのだから、本当は気付いていたんじゃないだろうか、と思うだけで心臓が跳び跳ねてしまいそうだった。
小坂「おはようございます!」
私がそうこう考えている内に小坂さんが出勤してきた。
山口「おはようございます。」
小坂「土日はホント、迷惑かけて申し訳ありませんでした。」
小坂さんは出勤するなり、深々と頭を下げて謝罪してきた。
山口「え?いやいや!全然大丈夫。」
『やっぱり、本当に記憶も何もないのかな』
そう思いながら、私は小坂さんの謝罪に応える。
小坂「日曜日は、夕方まで頭が痛かった(笑)」
山口「あれだけ飲んでたらねー(笑)」
小坂「ホント、反省です。あ、それで日曜日と月曜日は売上どうだった?」
山口「昨日のはまだ集計中だけど、日曜日は前年比では106から上々だよ。」
小坂「う~ん。6ぁ。もうちょい工夫出来たかなぁ。」
山口「まぁ、俺の実力不足だよ。」
小坂「いやいや、後でちょっと三連休中の売上を反省してみます。」
山口「ホントにありがとう。」
小坂「全然気にしないで。私も楽しくなってきてるから。あ、そういえばさ……。」
山口「ん?」
小坂「日曜日に、駅の改札口で、中尾に会ったよ。」
山口「え?」
小坂「なんか、中学の友達に会いに来たとか。」
山口「そう……なんだ。」
小坂「もう帰るとこだったみたいで、電車まで時間なさそうだったから、あまり話出来なかったけど、元気そうではあった。」
山口「なら、良かった。」
小坂「うん。詳しくはまた上がったら、じゃあ、とりあえずカウンター入っちゃうね。」
山口「お願いします。」
小坂さんは、カウンターの従業員と交代し、レジの点検を開始した。
『日曜日の朝か。』
心の中でそう呟くと、私は、あることが気になり、自分のスマホをポケットから出して、LINE画面を開いた。
吉本から、土曜のお昼過ぎに、『今夜時間空いてるか?』とLINEが来ていたが、私は小坂さんとの約束があったので、無駄に詮索されたくない思いもあって既読スルーしていた。
山口「まぁ、偶然だろうなぁ。」
そう言いながら、私はLINEの画面を閉じたのであった。
※元投稿はこちら >>